銀魂 腐

□大切だったよ。誰よりも、君が
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辺り一面に舞い踊る桜。


その中に見慣れた黒髪を探す。

何処にいたって血の紅に負けないくらい目立っているあの、黒がいない。




「っ、のやろ…」



周りの浪士共をあらかた片付けたところで、
隊士達の騒ぐ声が聞こえた


嫌な予感がする



柄にもなく冷や汗が流れた

騒ぎの起こっている場所へと走った。




そこにいたのは、



「隊長!!副長がっ……」





そこにいたのは。



「ひ…じ、かた…さん?」


隊服の黒にじわりじわり紅が広がる。


土方さんから流れる血?


土方さんから……?



「土方さん!!!!!?」


駆け寄ってみれば、
土方さんはうっすらと目を開けたまま、

ゆっくりと口角をあげた。


まるでそれは、

まる、で……




「な…にしてんでィ、…馬鹿じゃ…ねーの…」




土方さんは、

少し眉間に皺をよせて、
それでも尚、笑っていた



だんだんと冷たくなってくる土方さんの身体が、


止まることを知らない土方さんの出血が、


もう長くはないんだと、
語っていて…



土方さんの心臓の音が少しずつ小さくなってて
土方さんが土方さんが土方さんが土方さんが!!!



「ひじか、土方さん土方さん土方さ、あぁああああああぁあああああ!!!」



いくら名前を呼んでも、
いくら声を張り上げても、土方さんは応えてくれなくて。



――ただ、最期、
ほんのすこしだけ口を動かしたと思ったら




『そうご、あいしてる』




だなんて。


貴方は俺をドSなんて言ってたけど、貴方は本当に真性のSじゃないですか。




最期にそんな事言われたら

俺には貴方しか見えないじゃないですか

貴方がいないと駄目じゃないですか


貴方の心臓はもう動いていないというのに!!



「…本当に、最低な人ですね…」



何で今なんですか、
何で今それを言うんですか、


何で貴方が生きてる時に言ってくれなかったんですか



「ひ……じ、かた…さんっ…」


涙が、止まらないよ。

貴方が此処にいないのなら想いを伝える事すら叶わない。




あの、ね。

貴方は俺が貴方を嫌いだと思ってたんだろうけど、

俺は貴方が、


大切だった。
誰よりも。
本当に。


大好きだったんですよ



ねぇ、お願いです。

土方さんを生き返らせてくれなんて言わない。

時間を戻してくれとも言わない。

言わないから、






どうかどうか、

この想い貴方に届きますように






END
(そして、またいつか。会えたらいい)
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