銀魂 腐弐
□優しい雨
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君からもらったものはいつだってキラキラ少し眩しくて、くすぐったくて、けどあったかくて、全部全部宝物なんだよ。
「死ぬまで一生愛されてると思ってた。」
目の前に立ち尽くす男は、俺に向かってたんたんとそう告げた。
八の字に歪んだ眉が、普段はなかなかカッコイイはずの旦那の顔を情けなくしていた。
「何言ってんの、あんた。愛してやってるでしょ」
「だから、死ぬまで一生だって」
「愛してやってまさァ」
「俺が死ぬまで」
ぽつり、呟かれた言葉にこれ以上誤魔化しなんて効かないんだと思った。見ないふりをしてくれるのも、そろそろ限界だったかな。
腕から伸びるチューブを少し憎たらしく思ってみたり。
旦那が、優しく笑った顔が好き。
俺の髪をぐしゃぐしゃとかき回す、少し乱暴な手が好き。
かったるそうに、だけど愛しくてたまらないって感じで俺の名を呼ぶその声も好き。
馬鹿みたいにアンタに恋をしている。
「俺が死ぬまではあんたのこと愛してあげます」
「やだ」
「不満ですかィ?」
「やだよ、沖田くん。」
くしゃり、悲しそうに歪む瞳がうっすらと膜を張っているように見える。
実は意外と泣き虫だったんだなあ。
「沖田くんの気持ちはもういっぱい、いっぱいもらってるよ。届いてるし、わかってるよ。だけど、全然足りねえんだ」
「許さねぇよ、こんなとこで終わらないで。俺にもっともっとちょうだい。沖田くんの好きも大好きも愛してるも、もっと、」
「やだよ、沖田くん」
「愛してるよ、」
「死なないで」
「俺を置いて逝かないで」
強いくせに泣き虫な旦那。
泣き虫な旦那の涙が伝染して、染み渡る。
「…逝きやせんよ。」
「嘘吐けよ、何でこんなに、」
「あんたのこと、置いて逝きやせん。ちゃんと待っててあげます」
た旦那のあったかい手が俺の頬をなでた。優しい人。
君からもらったものはいつだってキラキラ少し眩しくて、くすぐったくて、けどあったかくて、全部全部宝物なんだよ。
「俺が死んだらあんたのことちゃんと待っててあげます。ずっと一緒に居てあげます。あんたが死ぬまで愛してあげます。だから泣かねえで、」
ぽろぽろ、洪水のような涙の雨が降る。
優しい彼はごめんね、ごめん。と謝罪を繰り返しながらそっと俺の鼻にキスをおとした。
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