アオイイロ

□Good luck comes by cuffing.
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2学期が始まった。
腕のケガもほとんど完治し、バイトも無事に出来るようになった。

初めての割になかなか接客が上手いと佐竹に誉められ、バイトが楽しい。

「疾風、これ3番な」

雨宮からコーヒーを渡され、テーブルに運ぶ。

「お待たせいたしました」

女性2人組で、コーヒーを置いて微笑むと顔を赤くした。

疾風は全く気にしていない。というよりも気付いていないらしい。

自分の容姿に対して、頓着していないのだ。

戻ると疾風を見て雨宮がニヤついている。

「…何ですか?」

「いや、罪な男だと思って」

「はあ?」

意味がよく分かっていない疾風にクスリと笑って、雨宮は疾風のエプロンに手をかけた。

「え、何を」

エプロンを外され、きょとんとしていると時計を指差された。

もうあがる時間だった。

「あ…お疲れさまです!」

ペコリと頭を下げて、先に更衣室にいた小林と合流した。

「お疲れー」

「小林も」

週3日、疾風はバイトをしていた。

3日とも小林と一緒だ。

雨宮が気を利かせて2人一緒のシフトにしてくれたのだ。

友人がいた方が心強い。

小林は週5日バイトをしている。

佐竹は今日はいなかった。用事があるらしい。

もう一度雨宮に声をかけて2人は店の裏口から外へ出た。

「うー、疲れた!」

小林が腕を上に伸ばした。

「けど雨宮さんも佐竹さんも優しいよね」

「な!本当にここでバイト出来て良かった」

「小林って、人気だよね」

疾風のいきなりの言葉に、小林は目を見開いた。

「な、何いきなり」

「いや、小林がホールに行ったら女性の視線がビシバシ飛んでたから」

「えー…そう?」

むしろそれはお前だよ、と心の中で思う小林。


「…………」

「…小林?」

急に黙り込んだ小林に、疾風は気に障る事を言ったかと焦った。

「いや…なんか」

「?」

「好かれるのは嬉しいけどさ。本当にすきになって欲しい人に想われないと、意味ないなって」


「うん…」

切ない小林の瞳に、疾風はそれ以上何も言えなかった。

なんだか、踏み込んではいけない気がしたのだ。



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