たんぺんもの


□良子悪子。
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side:陽介







「お兄ちゃんでしょ?
しっかりしなきゃ。
お母さんもお父さんも、亡くなって
一番、大変な時だってわたしも解ってるけど。

貴方、もう25よね?
あら?
28?
もうそんな…
なら、もっとしっかりしなさい。


いい、まだ陽太は22歳で大学生でしょ。
貴方があの子を面倒見るのよ。
解ってるわね。
陽介!」












ああ、十分な!!
うるせぇよ。ババア。

てめ、俺がいくら稼いでるか知ってるか?
月収だけで軽く手取り40万超えてんだよ。
解る!?
俺が親父たち入院してる間に俺が家計支えてたんだよ!!
このボケが!














「ええ、おばさん。頑張ります。色々と助けて頂くこともあるかと思いますのでどうぞこれからもよろしく御願いします」












ああああ、うぜぇんだよ。
早く帰れ!!
社に戻らなきゃなんねーぇえんダヨ!!
ババァ!!
葬式終わったんだよ!!
それはもう6ヶ月前にな!!
陽太はもう寮に戻ってんですけど!!!
マジで帰れ帰れ帰れ帰れ帰れ帰れ。






「そうよね。いつも貴方、しっかりしてるもの。おばちゃん、いらない心配だったわね。」






は・や・く帰れ!!










そう、俺らの親父とおふくろは他界した。
普段行けないからと言って。
俺が行かせた。
その帰り、俺と電話中。
バスに乗り込もうとして。
馬鹿なバイク野郎に二人ともふっとばされて病院に入った。


管を通されて何もかも自由が利かない体で親父とおふくろは生きていた。



俺が、病院についた時。
もう意識が戻らないままだと告げられて、俺は地に落ちるほどの眩暈を感じた。
親父とおふくろが、もう。


ショックだった。



しばらく、動けなかった。
寮に入っていた陽太が病院に駆け入って来た時、
ようやく俺は現実に戻った。




こいつ、を守らなければ。





その一心だけが俺を支えた。
親戚連中も協力してくれた。
涙が溢れそうだった。


けれど。






親父とおふくろは、その3ヶ月後に息を引き取った。
最後、安らかに見えた死に顔を見て俺は涙を流すことを許されなかった。



俺は。
兄貴だから。





深く、その一言が突き刺さっていた。
葬式まで済ませ、親戚も帰らせ、弟を寮に戻した。



弟は22になった。
後、1年で、大学を卒業し帰って来る。









俺はといえば、親父とおふくろが事故にあった時、
既に働いていた。
営業、出来高制。
気づけば驚く程高給取りになっていた。




まあ、色々と煮え湯は飲んだけど。
俺の実力は営業だけ、えらく高かった。






その為、大学時代女遊びをしまくったこの俺は。
未だに独身彼女無という悲しい事態にもなってるんだが。




弟、陽介は遊んでる事間違いない。
くそ、羨ましい…
























やっと俺はババアを追い返し、脱力した。
はぁ。
疲れる。
俺は一人ん時だけ、素に戻れるんだよ。
馬鹿。
さっさと帰れよ。



くそ、社にもどらねぇと。
部長に金一封貰って…


明日から、陽太が帰って来る。




掃除して。
洗濯して。
旨い飯を準備してやって。
陽太の話聞いてやって…。



久しぶりだ。





半年ぶりだし。
思い切り甘やかせてやんねぇとな。
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