たんぺんもの


□ワガママなマネージャー
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「きゃーっ、見て見てトオルよぉお」
「いやあぁあ」
「トオルぅ〜」
「本物よ〜〜っ」





女が黄色い声を上げる。
その原因のトオルとは、正に俺が必死で女から守るこの男。



人気俳優
屋良 徹(22)




ちなみに人気はアイドル並。
きつめの目と厚い唇が特徴的な少し陰のある男前。
そこが女受けするらしい。



俺から言わせればそこらにいる若い男と何等変わらない若者だが。


女受けはいいらしい。











Title:ワガママなマネージャー












「あぁ、うるさかった…勘弁してくれよ。」


車に乗り込むや否や俺はため息を盛大についた。

ファンがいてこそ俺はいるけど
流石にキツイ。



車のハンドルを握るマネージャー
若野 義人(33)
苦笑混じり。



「いつもながら徹さんの人気は凄いものがありますね。この分だときっと次回の舞台も期待できますよ」



あー模範解答ありがとう。

俺は今疲れてんの。
頼むから


仕事の話しはヤメテ。

今日はもう終わったんだし。




走り出した車の揺れに眠りを誘われそうになる。



は!!




ヤバイヤバイ。

今日これから帰ってから友達と飲み会なのに。



「ご自宅へお送りして宜しいですか?」


「うーん…」


「この後何かご予定でも?」


「友達と約束があって。ゴンタ集合なんだよね」


「ではゴンタで宜しいですか?」


「いやけど、風呂入りたいんだって。今日ハードだったからシャワーいけなかったじゃん」


「化粧は落とした方が宜しいかと。ではご自宅に一度お送りしましてゴンタへ、で宜しいですか」


「あ、うれしいかも」


「わかりました」




よくできたマネージャー。


芸歴も浅い俺なんかにつくような奴じゃない。


この間なんか


みそ汁くいてぇ
とかなんとかちらっと思ったら


休憩になったら俺の弁当の横に


若芽たっぷりみそ汁。
みそ汁の若芽はかなり大量じゃないと俺は納得できないたち。
好みも把握!



あの雑誌、今日発売だったよな
と思えば。



控室に雑誌が。





恐ろしいやつ。
有能過ぎる。


人気あるからこんなマネージャーなんだろーなあ
きっと。




「ねぇねぇ若野」


「はい」


「マネージャーとかはじめて何年なんの」


「今の事務所でしょうか?」


「いやマネージャー業」


「ちょうど3年でしょうか」


「3年?その前は?」


「7年程秘書をしておりました」

「秘書ぉ?!だからその喋り方なの」


「は?どういった意味でしょうか……」



車が停車した。


自宅についたらしい。


ドア開けて降りて。
車の中からマネージャーが降りてくる気配がないのを見る。



まあ普通つか今までもそうだったけど…


少し興味がわいていた俺は



「若野、中で待てば?」


窓を開けさせて声をかけた。


「いえ。わたしはこちらで明日のスケジュール確認もありますので遠慮致します。」


「俺の部屋ですりゃいいじゃん」


「…ですが。」


「あがれって」



少し逡巡した後、マネージャーが車から荷物と共に出て来た。


時計をちらりと確認した若野は俺の後をついてきた。



「ご友人とのお約束時間は何時でしょうか?」


「ん?1時から」



現在20:30


若野が片眉を上げた。



「明日は朝4時からロケが入っております。よければご友人とお食事終わるまで待たせて頂きますが」


「げ。それ夜中じゃねぇの〜!何のロケ?月9?」


「先日、顔合わせ致しました冷たい空のクランクインです」


「あれ?冷たい空って…明日あ!?」


「……………………顔合わせされた時にお伝えした筈ですが。まさか台本…」



若野の声が震える。

完璧主義な若野。
有能な若野。
知的な眼鏡が素敵な若野。


ちなみに。
怒らせるとこうなります。




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