たんぺんもの


□気持ちはきちんと
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「付き合わないか?」

後輩にそう言った。
高校二年。部活に入って来たその後輩はひどく緊張した面持ちで、部の伝統である新入部員の一発芸&自己紹介をしていた。
初めて見た時、胸がひどくざわついた。
胸のざわつきは初めての後輩だからかとその時は納得した。
けれど、後輩が俺に懐くにつれてそれが勘違いだと気付いたのは一ヶ月前だ。
自分で自分が信じられなかった。
まさか…自分がゲイだったとは。信じられなかった。女性と付き合うし、勿論それなりのことをしていた俺としてはありえない事態だ。
戸惑いが大きい。
動揺していた。
けれど、後輩は無邪気に懐いてくる。

笑顔



仕種

全てが気になった。ときめいた。
柄にもなく手が触れ合っただけで焦りを覚えた。
そして
二週間が過ぎた頃、認めたくないが認めざるを得ない事態がさらに待っていた。
つまり…夢精がおきた。
しかも夢は後輩とのものだ。



少しだけ泣いた。



それからは思いが募る一方だった。
近くにいるのに触れられない。想像を越えた思慕。
堪らない。
泣きそうになったが、女性相手と偽った上で友人に相談すれば
『珍しいな…お前がそこまで入れ込むなんて。告白すりゃいいだろ。ま、お前ほぼ顔で落ちるんだからさ。大体女に困ってないやつがよくも彼女いない歴17年の俺に相談しやがったな!さては嫌がらせか!?P女の女もG校の女も…(以下延々て続いた)』
と妬み半分でアドバイスをくれた。

しかしだ。問題は女じゃない。
異性であればいろいろとアプローチのやり方も考えられる。
好きになって貰おうと思えど一緒に遊びにいったり一緒に帰ったりというのは、同性同士であれば仲がいいで終わる。
実際他の友人とそうあってもその程度の心の変化だ。
類に漏れず非常に仲がいい先輩後輩…それが俺達だ。
どちらかアクションを起こさないとどうしようもないと気付く。
意識もしてもらえない。
そう思い、告白に至ったのだ。


「はい。」




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