たんぺんもの
□友人?
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最近。
俺には一つ、気になる事があった。
勿論、気のせいと思ってはいたのだが。
それと言うのも女友達が何度も何度も何度もある事を事あるごとに言って来るからだ。
それは、中の良い友人である
八尋 祐樹(27)についてだ。
確かに、べたべたしてくる。
彼女と別れた途端、「尚也くーん」と尻尾をふる犬の様に。
毎日、数回に渡って暇なのか電話もしてくる。
気付けば二人でよく遊びに出掛けたりする。
けれど、けれどだ。
「それは竹野さんが好きだからよ!あたしたちはいつでもOKよ。付き合ったら是非教えてね!」
いくらなんでもそれはないだろ。
気持ち悪い。
よく考えてみろ。
男同士だぞ、守りたいどころか気持ち悪くて吐き気が催すって話しだ。
祐樹だってそうだろ。
有り得ない。
しかし。
すりこみか何かを目的にしているのか彼女は諦めない。
事あるごとに、会う度に目を輝かせて言ってくる。
未だかつてみた事がない様な輝きようだ。
絶対に彼氏にも見せない様な輝き。
見せてやりたい。
きっと…ああ、こいつ今彼氏と別れたばっかか。
そんな訳で
俺は少しばかりその手の話題に過敏になっていたこの頃だった。
Title:友人?
祐樹が貢がせられていたとしか思えない女と別れたのもあって、俺は心底ほっとしていた。
いくらなんでもブランド物のもんプラス、現金渡すなんて違うだろっつってた所だったから。
祐樹はそんな女でもかなり好きだったようで未練があるのか電話してきてはその話を何度もしていた。
俺は他ならぬ祐樹だし、呆れずに聞いていた。
昔から俺を慕ってきていたし。
女の事も何もかも俺にまず相談してきていた。
そりゃもうウザイくらいに。
そんなある日だ。
祐樹から遊びに誘いの電話があったのは。
まあ、いつもの事かと俺は電話に応えていた。
煙草を吸いながら、風呂あがりに気分よく、だ。
「はいはい」
『尚也くん?祐樹だけど』
「うん、何?」
『今日暇?』
「え、何で」
『いや今日俺、暇でさ。尚也くん、暇だったら遊ばないかなーとか思って』
若干、おまえの暇はいつもじゃねぇのかと思いつつも。
今日は予定があった。
別の奴と昼間電話で遊ぼうかと話を決めたのだ。
「悪い、高橋と遊ぶ約束してんだよ。また今度な」
『え、そうなんだ?』
「おう、今日昼間決まったんだよ。悪い」
『俺の尚也くんなのに…』
………は?
今なんつった?!
背筋をはい上がる悪寒。
思わず煙草を落としかける。
正直、女友達の言葉が過ぎった。
「彼女いないんだし、付き合えばいいじゃん」
こいつ、まさか…違うよな!?
違うよな?!
思わず、真剣な声音で。
「気持ち悪いぞ、おまえ。」
『あ、ごめん。尚也くん…いや深い意味ないんだけど…』
慌てて謝る祐樹。
悪い、悪いが。
本気で気持ち悪い。
俺は奴のほくそ笑む顔が見える。
彼女はきっと笑う筈だ。
しかも喜ぶ筈だ。
若干どころじゃない。
それこそ素敵な笑顔だ。
俺は、祐樹と友達を一瞬やめたくなったがそれは留まった。
祐樹が取り繕うよう、何事か話始めたが耳に入るはずもない。
「二度というな。じゃあな」
『へ?あ…うん。ごめん。』
ブチッ。
通話終了。
しばし、煙草を味わう。
ああ、旨い。
これは旨い。
祐樹も二度とこの話を持ち掛ける事はない筈だ。
大丈夫。
大丈夫。
己に言い聞かせた。
高橋と遊びに行く時間になって、俺は準備を終えて車に向かっていた。
昔は走り重視で車を選んでいたものだが、今は落ち着いたもんだ。
鍵穴にキーを差し込んだ時。
携帯がなった。
メール。
高橋からかと思い、携帯を開いた。
………見なかった事にしよう。
携帯に来たメールの送信者は祐樹。
内容は…知らない。
見ていません。
見ていません。
見ていません!!!
俺は懸命に忘れようとしていた。
END