銀時×土方2

□shift! 4
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「確かに最初はどっかの引き篭もりのオタクが憑り付いてたのかもしんないけどさ。それはもうアイツが捩じ伏せたじゃん。アイツは何時までもそんなもんに乗っ取られるほど柔じゃねェよ」

それは今まで一番近くにいたお前の方がよく分かってるはずだ、と付け加えると、どこか悔しげに彼は唇を噛み締める。

「じゃぁ、旦那は土方さんの中にあんな腑抜けがいるってんですかィ?」

ああ、それを認めたくないのか。沖田にとって土方は、どこまでも強く不遜な男でいないといけないらしい。しかしそれが土方に対して、プレッシャーを掛けているということには気付いていないのだろうか。いや。恐らくそんなことを悟らせるなんて、土方がするわけもない。
土方はとても繊細だ。本当は優しい不器用な男なのに、真選組のため、近藤のため、彼はそれをひた隠しに押し殺してきた。それはいつの間にかもう外せない仮面となって彼に貼り付き、おかげできっと息も出来ないほどにまで追い詰められていたのだろう。
その仮面を剥がすことができるのは、トッシーだけなのだ。
天真爛漫で無邪気な彼。どこまでも純粋で純真な彼は、押し殺され続けた土方がバラバラに分解して再構築されたものなのかもしれない。

「トッシーはね。きっと土方の抱き枕なんだよ」

あの恋人は、寝るときに何かにしがみ付く癖がある。だからいつも枕に抱き付いている腕をそっと外してそれに代わると、土方はそのまま俺に抱き付いてくんだ。
胸元に顔を寄せ、自分の収まりのイイところを探し出すまでもぞもぞと動き、場所が決まると安心したようにすっと眠りが深まる。その仕草はとても可愛くて、何時だって俺を楽しませてくれる。しかも朝起きた時、抱込まれているその姿に顔を真っ赤にして怒る彼は最終兵器かと思うほど凶悪に可愛い。ま、そんなことまで沖田には教えないけど。
とりあえず、トッシーはそんな土方にとって精神的な抱き枕ではないのか。彼がいるから土方は安心して眠ることができる。トッシーが今まで抑え付けてきた自分の弱さを解放してくれるから、土方は潰れずにすんでいるのだろう。

「強ェだけの人間なんて、この世にゃぁいねェよ」

みんなどこかで弱音を吐いてるんだ。そうじゃないと、きっとどこかでぽきりと折れちまう。
ギリギリだった土方。意地っ張りな彼は恋人である俺にさえ、決して弱みを見せずに追い込まれていったのだ。
だからトッシーは俺に甘えてくる。無意識に弱みを曝け出し、全て受け入れて欲しいと委ねてくるのだろう。
そんな彼をどうして冷たく突き放せるというんだ。

「だから、トッシーの間だけは甘えさせてやってくれ」

沖田に通じただろうか?それは分からない。それでも彼から否と言う返事は返ってこなかったことに俺はそっと息を吐く。





ヘリはもう、京に着く。





2007.9.22〜29(初出) 2007.10.6(収納)




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