銀時×土方2

□shift! 4
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京に向かうなら、陸路、空路、海路のいずれでも行ける。
しかし、のんびりしている時間はなかっただろう。すぐに追っ手が掛かることなど考えなくても分かることなのだから……。
ならば一番時間が掛からない空路を使った可能性が高いとすぐにターミナルを閉鎖したが、手遅れだろう。空路ならすでに大阪(京にはターミナルがないので、大阪から陸路となる)に着いていておかしくない時間が経っている。現に調べてみると、それらしき二人を乗せた記録が残っていたと、近藤が電話で知らせてきた。すでにその機は大阪に降り立ち、客を吐き出したあとだったらしい。もしその二人がトッシーと河上なら、後は京に入るまでにどうにか追い付かなければならない。一応、向こうにいる見廻り組には協力を要請はしたと言っていたが、どうも心許ない。
京に直接着陸できるだろうと、俺は真選組が用意した(正確には警察長官が用意した)桜の代紋の付いたヘリコプターに収まりながら、イライラと爪を噛んだ。

「旦那ぁ。ちょっと落ち着きなせィ」

隣りに座る沖田の呆れたような声音に、苛立ちが更に募る。何でこいつはこんなに冷静なんだろう。
トッシーが沖田のことを怖がっていることには気付いてた。今回のことだって、きっとこいつが屯所にいるから、俺の言い付けも破って一人で外出したのだろう。
そう思うと苛立ちは怒りへと変わる。

「沖田くんはさァ。何でトッシーに冷たいわけ?」

だからつい直球で聞いてみた。嫌い、ではないと思っている。この前高杉に拉致られた(といっていいのか、ナンパされたといっていいのか)時も血相を変えて先陣に立ち、アキバの探索を行っていたのだから、それはないだろう。
それでもやっぱりトッシーを前にすると、彼の態度はどこかよそよそしく冷たいものだと俺には見えた。
沖田はまさかそんな直接的に問い質されるとは思ってなかったのか。ちょっと吃驚したような顔で俺を見る。そしてハァッと大きな嘆息を落とした。

「あれは土方さんじゃ、ありやせん」

視線を下に落として、沖田は彼にしては珍しくぽそりとそう漏らした。
まァ、確かにそうだ。トッシーは土方とは全く違う。その性格も喋り方も仕草も嗜好も、そして思考も何もかも……。なのに顔と声が同じだというだから、余計に居た堪れない。

「逆に聞きやすけど、何で旦那はそんなに優しくするんですかィ」

トッシーに土方の人格を取って代わられた。きっと沖田はそう思っているのだろう。
それに対して何故恋人である俺が憤らないのか。そんな批難をしているに違いない。
トッシーは土方じゃない。沖田の中で彼らをイコールで結ぶことは、あり得ないことなのかもしれない。
でも、俺は違う。

「トッシーはね。ちゃんと土方の一部なんだよ」

そう言うと、沖田は途端にそのベビーフェイスを顰めた。そんなはずはないだろう、と彼は無言で俺を責める。




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