銀時×土方2

□天災は忘れたころにやってくる
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「銀時は男もイけるのか?」

講義が終わり、今夜はパッとコンパに行くことになっていた。あと二人と待ち合わせしている最中に突然桂がそんな事を尋ねてきて、銀時は吃驚して目を瞠る。一瞬何を言われているのか分からなかったが、すぐに昼間のトーシローのことだと思い至った。

「んなわけねェじゃん。なら、コンパなんて行かねェよ」
「そう、……だな」

思わず顔を顰めて返事する銀時に、桂がひどく残念そうな顔をしているように見えるのは気のせいだろうか。
口を開こうとした途端待ち人が来て、話は中断した。

「悪い。待ったか」
「いや。俺達も今来たとこだ」

遅刻してきた河上と伊東にそう告げ、皆で歩き出した。

「今日の相手は?」
「看護学生らしいでござる」
「ナースプレイじゃん」

そんな軽口を叩きながら、店に向かう。
ふいに昼に見たトーシローの泣き顔が脳裏にちらついたが、頭を振って無理やりその映像を追い出した。



コンパが終わって帰路に着いたのは、そろそろ日付も変ろうというほどだった。
かなり飲んだために、足元がふらついている。そんな状態で施錠を解いて扉を開けると、途端に母が走り寄ってきた。
珍しいこともあるものだ。いつもなら銀時が帰宅しようが完全にスルーのくせに、と思いながら、ああ、トーシローのことで文句を言いにきたのだと気付いたら、途端に憂鬱になった。
だが、母の口から飛び出した言葉に、銀時は瞠目する。

「トシちゃんは?」
「は?」

トーシローと別れたのは昼だ。あれから彼は帰ってきていないのだろうか?

「あんたのレポート、持ってったでしょ?」
「いや。来たけど、すぐに帰ったよ」
「ソウちゃんも気が付いたら、いつの間にかいなくなってるのよ」

一瞬道に迷って帰ってきていないだけかと思ったが、ソウゴがいないならそうではない。やはり家を出て行ったのだろう。
彼らは一心同体だと言っていた。きっと共にいるはずだ。

「家に帰ったんじゃね?いいじゃん。別に」
「アンタって冷たい子ね!トシちゃんが何も言わずに出て行くわけないでしょ!!」

よもや自分が追い出したなどと、言える雰囲気ではなかった。何も言わずに出て行ったなら、余計なことなど言わなければいいではないか。これで、今までの生活に戻るのだ。
ギャーギャーと煩い母に適当に返事をしながら、部屋に戻る。
そこに置いてあったトーシローのホウキがなくなっているのに気付いて、ズクンと胸が抉られるように痛んだ。
最後に見た、トーシローの泣き顔を思い出す。
あれほどまでひどいいい方をしなくてもよかったかもしれない。じわりじわりと後悔の波が襲い掛かってきた。
その時だ。いきなり部屋が明るい閃光に晒される。次いでまるで生木が裂けるような音が轟いた。
春雷だ。
それと共に、まるで盥を引っ繰り返したかのように雨が降り始めた。あまりにきまぐれな天候の変化に、銀時は息を呑む。
トーシローはオオエドに帰ったのだろうか?もしまだこちらにいるなら、この雨をどう凌いでいるのだろう?
魔法でどうにかしていればいいが、あの下手くそのことだ。恐らく無理だろう。
あんなに泣き虫だから、この雷に怯えて泣いているかもしれない。
気が付くと銀時は、傘も差さずに家を飛び出していた。





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