銀時×土方2
□僕の一番欲しいもの
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その後、自分が魔法使いだと告げても、彼女は嫌悪することもなく受け入れてくれた。ソウゴを見ても、単に可愛いと喜んだだけだ。
どこまでも彼女は漢前で豪胆だった。
「ねェ、トシちゃん。これ着てみせて」
翌朝。彼女が手に持って見せたのはひらひらととても可愛いワンピースだった。所謂メイド服だ。
どうやら将来、銀時の恋人に着せようと買っておいたものらしい。
トーシローが彼女の申し出を断るわけがなく、言われたままにそれを着てみせる。髪も長い方がいいだろうと、何度か失敗しながらもどうにか魔法で伸ばすと、彼女はとても喜んでくれた。
「銀時も喜んでくれる?」
「こんな可愛いトシちゃん見たら、誰でも喜ぶわよ」
ぱちんとウィンクを決める彼女はカッコよくって、思わず見惚れてしまったトーシローだ。
それからは一緒に朝食を作った。手の指も実は全部足の親指なんじゃね?と思うほど、手先まで不器用なトーシローだが、それでも彼女は辛抱強く教えてくれた。
かくして出来上がった朝食を前に、トーシローは感動のあまり瞳を潤ませる。
ほとんど彼女が作ったようなものだが、いつでも自分が手伝うとなぜか滅茶苦茶になるのだ。それなのに今回はちゃんと形になっていた。それだけでも奇跡に近い。彼女の方が魔法使いかと思った
ぐらいだ。
トーシローの格好を見た銀時はちっとも喜んでくれはしなかったが、それでも料理は褒めてもらえてトーシローは大満足した。
銀時が家を出るときも、どうにか彼女の口添えでキスをしてもらうことができて、トーシローはホクホク顔だ。
今回は頬にしてくれたのだが、未だそこは熱を持っているようで、トーシローを幸せにした。
「あら?」
シルヴァーナが掃除をしているときだ。その声が聞こえたのは……。
トーシローは慌てて飛んでいく。
「マム?」
ひょっこり顔を覗かせると、彼女は玄関先でなにやら手に持っている。不思議そうな顔でそれを見ると、彼女は呆れたような顔をした。
「どうやら銀時が忘れていったみたいね。レポートかしら?」
中を見ながらそういう彼女に、トーシローは走り寄った。
「俺、持っていく」
「いいのよ、そんな甘やかさなくて……。忘れたあいつが悪い」
「でも……。俺、銀時のお嫁さんだから……」
彼女は一刀両断だったが、トーシローは恥かしげにそう告げる。すると彼女は少し瞠目してから、ガバリとトーシローを抱き締めた。
「優しいのね、トシちゃん!」
「俺、ちょっとでも銀時の役に立ちたい」
銀時はどうやら自分のことを煙たがっているということに気付いている。だから少しでも役に立って、傍にいてもいいな、ぐらいには思っても貰いたかった。
頑張れ!トシちゃん!!という声援に送られて、地図を片手にトーシローは大学に向かったのだ。
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