銀時×土方2

□僕の一番欲しいもの
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「銀時は、俺のことが好きじゃないのかな?」
「好かれてるとでも思ってんですかィ?さすが土方さん。目出てぇや」

ぽそりとまるで一人事のようにそう零すと、それを聞きつけた使い魔であるソウゴはあっさりとそう言って切り捨てた。トーシローはその一言に、がっくりと項垂れる。
確かに自分でも強引なことをしていることは分かっていた。それでも、彼が欲しかったのだ。
だから彼に好かれようと頑張ってみたのだが、やはりうまく魔法を使うことができなくて、余計に手間を掛けさせる羽目になってしまった。銀時はとても怒っているようだ。
何故自分はいつもこうなのだろう。トーシローは泣きたくなる。
オオエドにいるときもいつも失敗して、母に怒られてばかりだった。近藤は母にだけは頭が上がらないのだが、そういうときだけは頑張って異論を唱えてくれるのだ。が、如何せん母は強すぎる。
結局最終的には父子揃って説教されるのが常だった。
銀時の両親が帰ってくるというので、今度こそ名誉挽回だと意気込んで嫁として挨拶をしようとしたら、それも見事に断られてしまった。
銀時の親なら自分の親になるのだから、ちゃんと挨拶をして仲良くやりたいのに、それさえも許してくれないのだろうか。
トーシローは哀しくなって、そのまま床の上にコロンと寝転がった。

「どうしたら銀時は俺のこと、好きになってくれるんだろ?」
「アンタが男の限り、無理でしょうぜ」

どこまでもソウゴは冷たい。いつものことだと言い聞かせても、じんわりと涙が浮かんできた。しかしここで泣き出したら、またソウゴに馬鹿にされてしまう。それが分かっているトーシローは、きゅっと唇を噛み締めてそれをどうにか堪えた。



だが思い掛けず銀時の母に気に入られて、トーシローはとても嬉しかった。こんなに手離しに他人に好意を示されたのは初めてだ。
一緒に寝ようと言われた時は、まるで夢かと思った。トーシローは今まで親と一緒に寝たことはない。父はおいでと言ってくれるのだが、いつも母が甘えるなと言って許してくれないのだ。
だからこんな風に、布団を寄せて皆で寝るのは初体験だった。
瞳をきらきらとさせていると、銀時の母も嬉しそうだ。彼女ににっこりと花が綻ぶような微笑みを向けると、ちゃんと微笑み返してくれた。

「銀時のお母さん」
「銀時のお嫁さんになるんでしょ?なら私はあなたのママよ?」

何の気負いもなく、彼女はそう告げた。トーシローはそれに目を瞠る。胸の奥からぽかぽかと暖かなものが一気に溢れ出てきた。

「マム……」
「なぁに?」

頬が火照るのが分かる。恥かしそうに上目遣いでその言葉を噛み締めるようにそう呼ぶと、彼女はすぐに返事をしてくれた。それだけで更にトーシローの頬が更に赤く染まる。
母は「自分はママという名ではない」と言って、決して呼ばしてくれなかった。ある意味そう呼ぶのは、トーシローの夢だったのだ。

「マムの髪、綺麗……」

彼女の髪は銀時と同じ見事な銀髪だ。陽の下に出れば、きっと光が乱反射して眩いばかりとなるだろう。
うっとりとそう言うと、反対に彼女はトーシローの髪を触りながら陶酔しているようだった。

「トーシローくんの髪のほうが綺麗。艶々ね」
「トシ……」
「え?」
「父も母も俺のこと、トシって呼びます」
「そう?じゃぁ、トシちゃん」

控えめにそう主張すると、彼女はすぐさまそう呼んでくれた。まるで本当の親子になれたようで嬉しい。
トーシローは蕩けるような微笑を向けた。




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