銀時×土方2

□苦労は買ってでもしろ
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「旦那ぁ」

台所でパックに口を付け、直接コーヒー牛乳を飲んでいると、後ろから突然声が掛かる。吃驚した銀時は口の中に入っていたコーヒー牛乳を盛大に噴出しかけ、どうにかそれを堪えた。
噎せ返りながら後ろを振り返ると、ソウゴがふよふよと浮いている。それに銀時は僅かばかり顔を顰めた。

「何?一緒に寝てたんじゃねェの」
「旦那に起こされやした」
「へーへー。そりゃぁ、悪ぅござんした」

ソウゴは先ほどトーシローについて両親の部屋に向かったはずだ。先ほど銀時が扉を開けたために起きたのだろう。しかし銀時の声は全く悪びれていない。

「まぁ、旦那がやきもち焼くのもわかりやすがね。少し多めに見てやってくだせィ」
「誰がやきもち焼いてるかァァァ!!!」

先ほどちらりと脳裏に掠めたことを言い当てられたような気がして咄嗟に大声を出し、その声に自分で驚いて慌てて口を手で覆う。それにソウゴは呆れたように肩を竦めた。

「土方さんの母ちゃんは、それはそれは怖い御人でねィ」
「え?あのゴリラでも敵わないの?」
「近藤さんが唯一頭の上がらない人物でさァ」

思わずゴリラ女を想像して、銀時はぶるりと身震いした。しかしゴリラとゴリラ女からあの愛くるしいトーシローが生まれたのだとしたら、まさにミラクルだ。恐るべき、魔法大国オオエド。

「だから、ちょっとばかし甘えさせてやってくだせィ」
「まァ、そういうことなら……」

あの母は豪放だが、確かに優しいところもある。しかし何故かそれが銀時に向けられた試しがないのはなぜだろう?一瞬そう思ったが、考えるだけ虚しさが込み上げてくるので止めておいた。
少しぐらい甘えさせてやってもいいか、と先ほどまでの苛立ちが嘘のように霧散する。
だがこの時点で、母にやきもちを焼いていたのか、トーシローにやきもちを焼いていたのか。銀時自身にもわかっていなかった。






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