銀時×土方2

□家庭円満の秘訣
4ページ/6ページ




オレンジ色の長い尾を引いていた空もすっかり闇に侵食された頃、そのけたたましい声は坂田家に響いた。

「お帰りぃ」
「何?やだ、この子〜!なにそんなテンション低いのォォォ?!ようやくママがご帰宅だってーのに……!!」

銀時とよく面持ちの似た女性が、彼をハイテンションで抱き締める。それに銀時はうんざりと、肩を落とした。ふと視線をずらすと、山のような荷物を持たされた父が、やはり苦笑を浮かべて肩を竦めている。
銀時は仕方ないと、諦めたように母の好きにさせていた。放っておくと、彼女は銀時の顔中にキスの雨を降らす。それには流石に辟易した。

「ちょっ!やめ……!!」
「もう!そんなに恥ずかしがらなくていいじゃない!」
「恥かしがってんじゃねェェェ!!」

本気で嫌がる銀時に母は、チェッとようやく離れる。銀時はこれ見よがしに、キスされた箇所を手で拭った。

「銀ちゃん、厭味〜〜〜!」
「やかましわァァ!!」
「まぁ、いいわ。ご飯作ってよ。お腹空いちゃった」

怒鳴りつける銀時をひらりとかわし、母は手を振りながらすたすたと中に入っていく。その後ろ姿に銀時はガックリと肩を落とした。
その肩をトントンと叩く者がいる。げっそりと顔を上げ顔だけ振り返ると、そこには父が佇んで、ただ頷いていた。彼はすでに達観していた。そうでなければ、あの母とは付き合ってはいけぬのだろう。
家庭円満の秘訣は、かかぁ天下に違いない。

「すまないね」
「仕方ねェよ」

男性陣2人はどこか諦めの様相で、母の後を追った。



「ねェ。今日はなぁに?」

着替えの済んだ父母が、リビングに入ってくる。銀時はフライパンを振りながら、チャーハンと答えた。

「えぇ?!久しぶりに帰ってきたんだから、和食にしてよ」
「うっせぇ。文句あんなら自分で作れよ」
「アンタ、最近可愛くないわね」

母はブツブツ言いながらも、父と並んでドカリと椅子に腰掛けた。どうやら自分で作る気は、全くないようだ。
それに嘆息を落としつつ、出来上がるチャーハンを見ながら、そういえばトーシローたちの食事はどうすればいいのかと、思い至った。

 ま、魔法でどうにかすんだろ

性別さえ転換ができるのだ。食事ぐらいお手の物だろう。
出来上がったチャーハンを容器に移し、並行して作っていた卵スープをカップに装った。それを両親の前に置き、自分の分も準備して席に着く。
2階を気にしながらの夕食が始まった。




.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ