銀時×土方2

□傍迷惑な猫可愛がり
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「そんな無謀なことは、止めた方がいいと思いやすがねィ」
「無謀じゃない!」

呆れたようなソウゴに、トーシローはムキになる。それに銀時は一瞬不安がよぎったが、トーシローが立ち上がってキッと上を見るので、口を挟むのは止めた。
ゆっくりとトーシローの手が上がったかと思うと、見る見る間に床に落ちていた建材が勝手に持ち上がり、まるで時間が遡るかのように元に戻っていく。
銀時はそれを信じられないものを見るような目で、ただ見詰めた。目の前で起こった出来事とはいえ、咄嗟には信じられない。
思わず、スゲェっと感嘆の声を上げると、目の前でトーシローははにかんだような笑みを浮かべた。

「あ、なぁ。呪文とか唱えねェの?「ピピルマピピルマプリリンパ」ぐらい言ってよ」
「ピピ……?」

興奮気味に笑みを浮かべながらそう口早に告げると、トーシローは聞き慣れないその言葉に、ことんと首を傾げる。その瞬間だ。凄まじい轟音が鳴り響いたのは……。
銀時が笑みを貼り付かせたまま、硬直する。
何が起こったのか、理解できなかった。いや、正確には理解したくなかった。
ギギギーっとまるで油のキレたブリキの人形のように、上を向く。そこには先ほどまで、かろうじて残っていた天井の残りの部分までもが綺麗に崩れ落ち、一部屋分丸々天井がなくなっていた。

「やっぱりねィ。だから止めときなせィ、って言ったでしょうが」

ソウゴの呆れ返ったような声に、銀時はぎこちなくトーシローを見ると、彼も唖然と上を見ている。銀時は次いで、ソウゴを見た。彼は銀時の視線に気付いたようで、肩を竦めている。

「どいうこと?」
「土方さんは、それはそれは魔法が下手っぴぃなんでさァ」
「下手ですむかァァァ!!!」

なんでもないことのようにそんなことを言うソウゴに、銀時はキレた。それは本気に、マジに、真剣にキレた。
どうしろというのだ?!この惨状を……。
しかしその叫び声と共に嗚咽が洩れたのを、確かに聞いた。
嫌な予感がしてトーシローを見ると、彼は瞳一杯に涙を溜めて、えぐえぐと嗚咽を漏らしている。そのまま彼はガックリ項垂れた。雫は頬を伝い、ぽたりぽたりとフローリングに落ちてはそこに小さな水溜りを作る。
銀時はその姿に、固まってしまった。その銀時に背後からソウゴの冷たい声が掛かる。

「土方さんを泣かしやしたね」
「え?俺?俺が悪いの?これ、俺が悪いの?!」
「俺ぁ知りやせんぜ」
「なにが?!」

そう叫んだと同時だった。それが目の前に現れたのは……。それは何もなかったはずの空間に、突如現れたのだ。
銀時は一瞬の出来事に、何の反応も出来なかった。まるで酸欠状態の金魚のようにパクパクと口を開け、目の前の謎の物体を見ている。

「トシィィィ?!どうしたァァァ?!」
「近藤さん……」
「誰だァアァァ!俺のトシを泣かせたのはァァァ?!」

嗚咽を漏らすトーシローを、謎の物体Xはしっかりと抱き締めていた。




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