銀時×土方2

□青天の霹靂
2ページ/4ページ


「あ〜あ。やっちまいやがった」

その途端だ。突然声が上がった。銀時はガバリと離れて周りを見渡すが、勿論誰もいない。
空耳だろうか?折角風呂に入ったのに流れる汗を拭った。
その時だ。

「ここでィ」

と再び声が掛かった。銀時はギョッとして声のした方を向いて、今度こそ本当に悲鳴を上げる。

「失礼ですねィ。人の顔見て、そんなに驚かなくてもいいだろうが」
「え、あ…、う、ぁ……?!」

本当に驚いた時に、声が出ないのだと、初めて経験した。腰が抜けてしゃがみこんだ銀時は、どうにか後退しようとするのだが、それも侭ならない。
目の前。正確には転がっている物体の胸の上にそれはいた。
姿形は人間と同じだ。ただ、そのサイズが著しく違うだけで……。それは20cmぐらいの大きさしかない。喋らなければ、精巧に出来た人形だと思ったことだろう。
だが、哀しいかな。それは喋るどころか、普通に動いているのだ。

「俺ぁ、ソウゴっていいやす、沖田総悟。旦那は?」
「え、あ、あの……」
「初めて会った人には、ちゃんと挨拶をしましょう、って習いやせんでしたかィ?」
「あ、す、すんません。僕、坂田銀時って言います」

サイズはミニマムなくせに、態度はマキシマムな謎の物体に教え諭され、銀時は思わず正座をして頭をポリポリと掻きながら自己紹介した。

「最近の若いもんはなってねぇな。挨拶は基本中の基本ですぜ」
「ご尤もで……」

一体自分は何をしているのだろう?そう思いはしたが、きっとこれは深く考えてはいけないのだ。自分はやはり夢を見ているに違いない。先ほど抓ってあれほど痛かったことは、すでに忘却の彼方のようだ。

「じゃ、俺はこれで……」

そう言ったかと思うと、ソウゴと名乗った物体はふわりと浮いた。そのまま飛んで去っていこうとするのを、ハッと我に返った銀時はハシッと引っ掴んだ。
それは確かな重量を持って、銀時の掌に収まった。銀時は自分でしておきながら、目を大きく瞠って、それを自分の目の前に持ってくる。総悟のこめかみには、くっきりはっきり青筋が浮かんでいた。

「なにすんでィ。痛てェじゃねェですかィ、コノヤロー」
「いや、その前にお前はなに?てか、あいつはなんですかァァァァ?!」

ひどく興奮しながら、銀時は未だ意識の戻らない謎の物体を指差して尋ねた。
ソウゴは指差された方を見、ハァッと大きな嘆息を落とした。

「あれはトーシロー。土方十四郎っていいやしてね。うちの国の王子でさァ」
「そうかぁ。王子さまかぁ。……、って納得出来るかァァァァ!!!」
「うるせぇ、男ですねィ」

一瞬、さも鬱陶しげに顔を顰めるソウゴを、このまま握り潰してやろうかと力を込めた。が、ふと先ほど聞いた単語に引っ掛かりを覚え、それは未遂に終わる。

「え?王子って……。……、おとこ……?」
「女の場合は王子とは言いやせんねェ」

その返答に、銀時はしげしげとその寝顔を見詰めた。その顔はこれまで見たどんな人間よりも綺麗だ。それなのに、男?男なのに、先ほど自分はキスをしたわけか……?

「お、俺のときめき返せェェェェ!!!」
「それはときめいたアンタの勝手でさァ」

ソウゴの鋭い突っ込みも耳には届かず、銀時はソウゴを離してガックリとその場に項垂れる。




.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ