銀時×土方2

□一番好きといって
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ようやく辿り着いて抱っこをせがむ十四郎を銀時は嬉そうな顔で抱き上げ、頬擦りをしてやる。十四郎はキャッキャッと喜んだ。

「十四郎は銀さんが一番好きだよねェ?」

つい嬉しくなってそう尋ねると、途端に隣から殺気じみたものを感じる。恐る恐る横を見ると、妙が阿修羅の如き形相で銀時を睨んでいた。銀時のこめかみに、汗が一筋伝え落ちる。

「十四郎はちゃーちゃんの方が好きよねェ?」

妙はひょいと銀時から十四郎を取り上げ、そう笑い掛ける。それはとても引き攣ったものであったが……。
十四郎は訳も分からずきょとんと不思議そうな顔をして、二人を見比べた。

「そんなことないよねぇ?銀さんのほうが好きだよねぇ?」
「何を言うんですか?!私です!!」
「俺だよ!!」

意地を張る二人はまるで子供のような口喧嘩を始めた。十四郎は不安そうな顔で、二人を交互に見比べる。喧嘩を始めた二人はそんな十四郎の様子にも気づいていないようだ。
喧々囂々と言い合う二人を前に、今にも泣きそうになった十四郎の体がフイに浮いた。

「あ……?」
「え……?」

突然現れた第三者の気配に、二人は喧嘩をやめてそちらを見る。するとそこには呆れ返ったような顔の沖田が、十四郎を肩に乗せて立っていた。

「いい加減にしなせィ。十四郎が泣きそうになってんじゃねェですかィ」

黒い。にっこりと微笑む彼が纏うオーラは、どこまでも漆黒の闇のように黒かった。二人は揃って顔を引き攣らせる。

「十四郎は俺が一番好きですよねィ?」
「う?」

その二人の前で沖田は、先程とは打って変った優しげな笑顔で十四郎にそう尋ねる。十四郎は釣られたように、にっこりと花が綻ぶような微笑を浮かべた。沖田はその頬に見せつけるようにチュッとキスをする。

「「あぁぁぁぁぁ!!」」

それに異口同音で叫び声が上がった。銀時などすでに涙目だ。
沖田はフフンと鼻を鳴らす。

「これに懲りたら、しょうもねェ喧嘩は止めることですねィ」
「「すみませんでした」」

おどろおどろしい沖田に、二人は揃って頭を下げた。
ついに参戦した強力なライバルに、銀時の道程はまだまだ険しいようだ。





2007.7.20




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