銀時×土方2

□最初の言葉
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土方十四郎が、逝った。
それを知らせたのは、弟の新八だっただろうか。妙はそれを信じられない思いで聞いた事だけは鮮明に覚えている。
彼と親しかったわけではない。自分のストーカーの親友。ただそれだけの認識だった。
それでも彼は、酔い潰れた(正しくは酔って妙にちょっかいを出し、殴り倒された)近藤をよく迎えに来ては、妙に謝罪をして近藤を回収していたから、当然のことながら顔馴染みだ。
無視するわけにもいかず、通夜、告別式と出席した。
そこにいたのは、いつもとは全く様相の違う近藤。そういえばここの所店に来ていなかったと、今更ながら気が付いた。土方は病気だったらしい、と弟が涙を浮かべながら教えてくれたから、きっと彼の看病をずっとしていたのだろう。
彼はげっそりとやつれていた。顔色は悪く、全く生気というものがない。何時だってバカのようの朗らかで、大声を出して笑う彼は、一体何処にいってしまったのだろうか。
近藤にとって、土方という存在がどれほど大切なものであったかは、妙だって知っている。
自分の半身だと、人目を憚らず公言していた。その半身を失ったのだ。その喪失感とはいかばかりであろうか。
妙自身、両親を亡くしているから多少なりとて分かっているつもりだ。
だからつい、近藤を慰めてしまった。
しかし絆された、というのは、言い訳だ。自分はきっと以前から、近藤のことが好きだったに違いない。何度殴っても、詰っても、絶対に彼は自分の元を去っていかないと、胡坐を掻いていたのだろう。
だが、このまま近藤は自分から去っていくかもしれないと思うと、体が竦んだ。
彼を失いたくない。咄嗟にそう思った。
そして妙は、近藤と結婚することを決めたのだ。自分の意志で……。
しかしそれは、予め定められた運命だったのかもしれない。




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