銀時×土方2

□天使の卵 1
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「で?それはなんだ?」
「だから天使だって言ってんじゃん」
「オメェは一度、その頭をかち割ってやらねぇとなんねぇみたいだなぁ?」
「暴力はんた〜い!」

ようやく神楽が眠りに就いた後、すらりと愛刀を抜いてぴたりと脳天に突きつけてやると、銀時は冷や汗を流しながらそう訴えてきた。その手の中には、先ほど孵ったばかりの銀時曰く天使がすやすやと寝息を立てている。
その姿を見て、土方ははぁっと息を吐いた。刀を鞘に戻し、もう一度ソファーに腰掛ける。それに銀時はホッとしたような顔をして話し掛けてきた。

「託卵、って知ってる?」
「……、カッコウがやるやつか」

突然耳慣れない単語に眉を顰めながら、海馬から記憶を引き摺りだしてくる。それに銀時は満足そうに頷いた。

「カッコウは巣を作らないで、他の鳥に自分の卵抱かせるんだけどさ。これもそれの一種なんだって」

なんでも辺境惑星に生息している鳥の一種らしい。その鳥は他の鳥の巣に自分の卵を産みつけ、共に育ててもらう。カッコウと違って託卵先の卵と孵化の日数が変わらないために、その雛は自分だけが異物だと認識されないために他の雛と変らないように擬態するというのだ。
母親がイメージする雛になることが出来る、それがこの鳥の一番の特殊能力だった。

「じゃぁ……」

母親が子を思う、強い想いをこの鳥は敏感に察知して擬態するというのなら……。

「この卵をあっためながら、ずっとオメェのことだけ考えてたよ」
「バ、バ、バ、バカじゃねェの?!」

ひどく土方は狼狽えて、思わず声を引っ繰り返しながら悪態をついた。しかしその項までが桜色に色付いていることを銀時は気付いているのだろう。「はいはい、バカですぅ」と軽く流す。

「で、でもどうすんだよ、それ。オメェ、育てれんのかよ」
「まぁ、子供には両親が必要だからね。だから、結婚してください」
「は?」

どうにか平静を装い、こほりと咳払いを一つして尋ねると、銀時は何の迷いもなくそう言い放つ。突然の論理に土方はついていけず、ぽかんと口を開けてまじまじと銀時を見詰めた。
笑みを浮べる銀時の、しかしその目はやけに真剣で、彼が冗談で言っているのではないということを如実に物語っている。
それを理解した途端、土方はがたりと立ち上がり、ボンと先ほどとは比べ物にならぬほど全身を熟れたトマトのように鮮やかな赤に染め上げた。

「け、け、け、けっ?!」
「結婚」
「か、か、か、かっ!」
「からかってなんかねぇよ」

もう日本語さえ発することのできない土方に銀時も立ち上がり、真っ直ぐに見据える。すっと片手を伸ばして火照る頬に触れた。

「俺の嫁さんになって、こいつを一緒に育ててください」
「………………、は……ぃ」

常にない、あまりにも真摯な顔はとても漢前だった。だから土方は思わず見惚れたまま、そう返事をしてしまったのだ。嵌められた、と後で気付いても、もう後の祭りだ。



こうして成り行きと勢いで、土方は真選組副長とは別に、旦那と子供を持つ妻という肩書きまで持つ羽目に陥った。ちゃんちゃんv



2007.10.20




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