銀時×土方2

□shift! 4
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その日。僅かばかり軍事金を持ってたから、それを倍増させるが如く、俺は副業に出かけた。所謂パチンコだ。
出た。珍しくジャンジャカ鳴って、多いに俺を喜ばせた。
なのに、なんだこれは……。なんの仕打ちだ!このやろ〜!!天国から地獄、とはまさにこのことに違いない。
俺は腕一杯にせしめた甘味を抱き締めながら、携帯に入っていたメールを見て呆然と立ち尽くした。
一通目はジミーくんだ。
その文章を見て、俺は思わずゲェっと喚いた。
土方が寝ちゃって、トッシーが目覚めたらしい。そこまではいい。問題はその先だ。
そこには『副長がアキバに行くと言って旦那のところに向かいました。すぐに着くと思いますので宜しくお願いします』と書いてある。
すかさず時間を見た。
……。って、もう一時間も前じゃねぇかァァァァ!!!
血の気がざっと引いていく音が聞こえる。
ああ、ダメだ。こんなところで眩暈を起こしている場合ではない。すぐに駆け出そうしたが、一応もう一通の未読のメールに目をやると、トッシーとの文字が飛び込んできた。(一応、土方用とは分けてある)
俺は慌ててそれを開け、今度は悲鳴さえ上げれないほどの衝撃を受けた。思わず命と同じほど大切な甘味を取り落としてしまうほどのダメージだ。

 ど、どういうことォォォォ?!

そこには、暴漢に襲われそうになったけど高杉の友達に助けてもらった。高杉が会いたがってるらしいからその人物と一緒に高杉のところへ行ってくる、といった内容が打ってある。
何がどうなったら、そんなことになるんだァァァ?!
第一、俺がいないときには絶対に一人で出歩くなってあれほど言って聞かせたのに、何でそれを破る!!
思わず地団駄を踏みかけたが、よく考えると仕事でもないのにフラフラとしていた自分にも非があると思い直した。
今日は新八はお通のコンサートに行ってるし、神楽も一人で留守番はいやだといって、定春を連れてお妙のところに行ったから、万事屋は留守だ。
恐らくトッシーは電話を掛けたが通じなかったのから、一人で出掛けたのだろう。彼が屯所にいるのを嫌っていることには前から気付いていた。
ああ、ダメだ!今はこんなことを考えている場合ではない。
俺はとりあえず屯所に電話を掛け、走り出した。



「旦那!どういうことですか?!」
「どうもこうもねぇよ!さっき、電話で伝えたとおりだ!」

屯所に着くなり、ジミー君が泣きそうな顔になりながら走り寄ってきた。トッシーが屯所を出て行くのを最後に見送ったのはジミー君らしい。
まさか俺に連絡も取らずに一人で出掛けるとは思ってなかったのだろう。散々前に言い聞かせていたのだから……。そのまま見送ったことに、ジミー君の顔色は真っ青になっていた。
しかも寄りにもよって高杉だ。顔色が変わらない方がおかしい。
俺は付いてくるジミー君と一緒に、近藤の部屋に向かった。
ずかずかと勝手知ったる屯所の縁側を歩き、 入るぞと声だけを掛け、返事も待たずに近藤の部屋の障子を開ける。中では近藤が、まさに檻の中のゴリラのようにうろうろとしていた。

「銀時!トシは……?!」
「高杉んとこに行くって書いてあったから、京だと思う。すぐに検問を敷いてくれ。たぶん引っ掛かんないとは思うけど……」

メールに書いてある高杉の友達とは、恐らく河上万斉のことだろう。あいつに友達なんぞいるもんか!!
ならば、そう簡単に検挙できるわけがない。そんな簡単なら、とっくの昔に捕まっているはずだ。
それでも、京に入ってしまえば見つけ出すことは更に難しいだろう。
京は未だに攘夷思想が根強く、高杉を神のように崇めている連中が多い。そんなところへ江戸の武装警察が乗り込んで、捜査の協力などしてくれるはずがないのだ。
第一、トッシーの間はまだいい。もし、土方が目覚めたらどうするつもりだ?!
真選組鬼副長など、鬼兵隊のやつらにとっては真っ先に血祭りに上げるべき対象だろう。高杉がどれだけそれを抑え込んだところで、徹底させるのは無理だ。
高杉はそこまで考えて、トッシーを呼び寄せたのだろうか。
いや。あのバカが、そんなことまで考えてるはずがない。
それよりも、土方自身がパニックに陥ることのほうが心配だ。目が覚めたら周りは、攘夷浪士ばかり。しかも最重要指名手配犯の高杉が目の前にいるとなれば、いくらなんでもパニくるだろう。
時間がない。土方が眠りに就き、トッシーが起きていられるのは長くて一日。
指示を出す近藤をその場に置いて、俺はジミー君と、そして名乗りを上げた沖田くんと共に京に向かった。




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