銀時×土方2

□shift! 3
1ページ/3ページ




ここは真選組という警察の屯所らしい。
どうして僕はここにいるんだろ?目覚めると大抵ここにいて、僕はとても不安になる。
ここの人は、どうやら僕のことが嫌いなようだ。
だって何時だって目が冷めて恐る恐る部屋から出て他の人に会うと、みんな僕を見た途端、吃驚してから顔を顰める。それを見るたびに、僕はとても悲しくなるんだ。
やっぱりオタクはダメなんだろうか?フィギュアを集めちゃダメ?
でも好きなんだから仕方ないじゃないか。
どうしてみんな、分かってくれないんだろう。
そういえば……、とカレンダーを見て僕は思わず気が遠くなった。

「何故でござるゥゥゥ?!」

思わずカレンダーに張り付いて、まじまじと日付を確認する。
日めくりカレンダーが指す今日は、すでに前から狙っていたプリ○ュアの限定モデルフィギュアの申込期間が過ぎた後だ。
なんでェェェ?!まだ僕、申し込んでないのに……!!
おかしい。寝る前はまだ申込期間前だったのに、何で起きたら期間が過ぎてるんだ?!
僕はさめざめと泣き崩れた。

「土方さァん、何やってんでィ。もう朝礼が始まりやすぜ」

その時だ。突然障子が開いたかと思うと眠たげな声が聞こえてきて、ぎくりと体が強張る。
顔を上げると、そこにいたのは沖田氏だ。僕を見た途端、彼の大きな目がすっと眇められた。

 まただ……

僕は一番沖田氏が苦手だった。きっと、ううん、絶対に沖田氏は僕のことが嫌いだから。

「何でィ。トッシーかィ」

僕を見た瞬間に舌を打ち、冷たい声が放たれる。その声に何時だって僕は、体の芯がすっと冷えていくのだ。

「出て行くんなら、万事屋の旦那に連絡入れてからにしなせェよ」

彼はそれだけを言い置いて、ピシャリと障子を閉めた。まるで僕なんて見たくない、という風に……。
何時だってそうだ。どうして沖田氏は僕が嫌いなんだろう。
ノロノロと立ち上がり、携帯を探す。
坂田氏に連絡しなきゃ。僕はなんでか一人で出掛けちゃいけないことになっていて、この前も坂田氏がいないから一人で買い物に行ったら、あとでえらく怒られた。
僕は子供じゃないのに、という反論はあまりの坂田氏の必死さに言葉にならず、つい頷いちゃったことを今は後悔している。だって坂田氏がいないと、僕はここから出ることができなじゃないか。
そういえばあの時に教えてもらった杉氏の連絡先が、いつの間にかなくなってたんだけどなんでだろう。
携帯を弄りながら何度も確認するけど、やっぱりない。杉氏はとっても優しかったから、もう一度会いたいんだけど、連絡先が分からなければどうしようもない。
とりあえず、坂田氏に連絡しよう。
坂田氏は大丈夫なんだ。この前は叱られたけど、でもそれだって僕のことを心配してくれてるからだってことは分かっている。
だけど携帯を鳴らしても、坂田氏は出ない。この前は志村氏が出てくれて、来ていいって言ってくれたんだけど、今日は志村氏も神楽氏もいないみたいだ。
どうしよう。誰もいないなら、ここから出れない。
ガックリと項垂れる。
でも、ここにいるのはいやなんだ。
ここのみんなは僕に冷たい。みんな、僕のことが嫌いだ。みんな、僕がいないほうがいいと思っている。
はっきりと言われたことはないけど、纏わり付く空気で僕にだってそれぐらい分かる。
やっぱり行こう。
もしかするとアキバのメイトだったら、まだ予約できるかもしれない。あそこには馴染みの店員がいるから、少しぐらい我侭を聞いてもらえる。
アキバだったら、迷子になることだってないから大丈夫だ。要は誰にも見つからない内に出掛けて帰ってくればいい。
僕は早速アキバに向かうべく、用意を始めた。



「あれ?お出掛けですか?」

そっと門に向かう途中で声を掛けられ、思わず飛び上がるほど吃驚した。
振り返るとそこにいたのは山崎氏だ。この屯所で彼だけは僕に対して冷たくないから、ホッと胸を下ろした。

「うん。アキバに行こうかなって思って……」
「旦那のとこまで送っていきましょうか?」

そんなことを言われて、ブンブンと頭を振った。あまりにも勢いよく振りすぎて、頭がふらふらする。
そんな僕を見て、山崎氏は驚いたように大丈夫かと訊いてきたから、頷いて返事した。

「だ、大丈夫。一人で行けるから……」
「でも、やっぱり一人は危ないですし……」
「子供じゃないから、大丈夫!!!」

そう言って僕は駆け出した。だって付いてきてもらったら、坂田氏がいないってことがばれちゃう。そしたらまた怒られるじゃないか。ううん。それよりも言うことを聞かないといって、坂田氏に嫌われるのが怖い。坂田氏に嫌われたら、僕はこの広い世界で一人ぼっちだ。

「え、あ、えェェェ!!副長ォォォ?!」

後ろから山崎氏の焦ったような声が聞こえてきたけど、僕は敢えて聞こえない振りをして、走って屯所を飛び出した。




.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ