銀時×土方2

□shift! 2
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俺は大層立腹していた。
先日の真選組転覆騒動。あれは何を隠そう俺が土方を手に入れるために画策したものだ。
伊東などという一見サド、だが実情はヘタレ野郎を見つけて少しその自尊心を擽って操り、それはもう手の届く位置にあったのに、万斉が下手を打ったせいで手に入れ損ねた。
いや。万斉もだが、一番邪魔だったのはヤツだ。かつては共に闘ったこともあるあの男。
もう牙の抜けた腑抜けになったと思っていたのに、こと土方が絡むとヤツは以前の姿に戻る。今回だってヤツが邪魔をしなければ、俺の計画は完璧だったのだ。
その上、ヤツは俺の土方(ここらへんは妄想)にちょっかいを掛けてやがる。許せねぇ!!
どうしてやろうか。
そう悶々と考えていると、部下からの定時報告を受けた。
何のか、って?勿論土方のだ。アイツの周りにはいろんな虫がいる。それをちゃんと把握しとかねぇとなんねぇ。時には牽制し、時にはきっちり潰していくのだ。
そういえば、あの騒ぎからたまに土方の行動がおかしい。どうやらあの時の妖刀の呪いがまだ残っているようで、あの時のヘタレオタクになっているらしい。
そこでふと思い付いた。
あのヘタレオタク、トッシーといったか、あれなら簡単に手に入るのではないか。
ちょうど今、土方はトッシーになって屯所を出たらしい。
これはチャンスだ。
俺はすぐにトッシーを追うことにした。



どうやらトッシーは銀時の家に行っていたようだ。だが珍しくヤツが仕事でいなかったらしい。
目の前には、とぼとぼと肩を落として歩くトッシーの後ろ姿。
……、可愛いじゃねェか。
最初はヘタレたオタクなんざ、土方じゃねェと思ってた。だが目の前を歩くトッシーは、どう見たって可愛い。

「おい。トッシー」

声を掛けると、あいつはビクリと肩を揺らして、恐る恐る後ろを見た。バッチリと目が合う。
見知らねェ顔だからか。ことんと首を傾げるその姿はやはり……、
可愛いじゃねぇか!コノヤロ〜〜!!!
こんな可愛い生き物を、銀時のヤローが独り占めしてやがったのか?!やっぱりあいつだけは許せねェ!!

「誰?」
「俺かぁ?俺は高杉晋助だ」

不思議そうに問いかけてくるトッシーに、なるだけ警戒心を抱かせねェように、微笑み掛けながら名乗ってやる。(周りから見ると十分に凶悪なのだが、そのことには本人は気付いていない模様)
俺の名を聞いてもいまいち反応が薄い。トッシーの時には真選組副長としての責任感は飛ぶのだろう。
これはいい。俺はほくそ笑んだ。

「どっか行くんじゃなかったのか?」

話題を逸らすためにそう尋ねると、トッシーは途端にしゅんと項垂れた。まるでロップイヤーのウサギのようだ。

「うん。ともえちゃんのフィギュアつき初版限定CDの発売日だったから買いに行こうと思ったんだけど……」
「行きゃぁいいじゃねぇか」

何をそんなに落ち込んでんだぁ?CDぐらい一人で買いに行けるじゃねェか。てか、ともえちゃんってなんだ?
なのに目の前のトッシーの瞳には、涙が溢れんばかりに溜まってた。

「二つ欲しいんだ。でも初版限定は一人一つだから……。いつもは坂田氏と買いに行くんだけど、今日はいなくって……」

そう言いながらも、トッシーは鼻をぐずぐずいわせている。なるほど。それでいつも銀時とアキバに行ってんだな。
なら別にヤツじゃなくても、俺でいいってわけだ。

「なら、俺が付いてってやろうか?」
「ほんと?!」
「ああ。構わねぇぜ」

そう言ってやると、ガバリと顔を上げたトッシーがまるで蕩けるような笑顔を浮かべる。

「ありがとう!高杉氏!!」

本当に嬉しそうなトッシーに、思わず鼻の奥がつーんとしてきた。
あ、まじぃ。マジで鼻血が出そうだ。





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