銀時×土方2

□信じる者は救われる 
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銀時を怒らしてしまった。
トーシローは俯いたまま、とぼとぼと構内を歩く。ポロポロと涙が伝え落ちてきたが、それを拭うこともしなかった。

「ど、どうしたんですか?」

突然声が掛かって、トーシロ−は吃驚した顔を上げる。するととても地味な顔をした男がとても心配そうな顔をして、トーシローを見ていた。
勿論見知らぬ男だ。その男はすっとハンカチを差し出してきた。それにトーシローは目を瞠る。

「ちゃんと洗ってあるから大丈夫ですよ。使い終わったら、捨ててもらっていいですから」
「あ、ありがと」

こんな時に優しくしてもらうと、余計に切なくなる。更に涙を零し始めたトーシローに男は多いに慌てた。

「どうしました?どこか痛いですか?」

そんな的違いな心配をしてくる男に、トーシローは首を振る。益々男は混乱したようだ。オロオロと覗き込んできた。

「家まで送りましょうか?」

そんな男の様子に、ついトーシローは涙を止めてまじまじと見詰める。どうしてこの男は見も知らぬ自分のために、こんなに親身になってくれるのだろう。ことんと首を傾げると、途端に男はその顔を真っ赤に染めた。

「大丈夫。一人で帰れる。これ、ありがと」

その意味も分からずに、これ以上話し掛けられてこられるのも鬱陶しかったので、トーシローはもう一度礼だけ言って彼に背を向ける。男は何か言いたげであったが、鈍いトーシローがそんなことに気付くわけもない。そのまま振り返ることなく、構内から出た。
人気のないところまで歩いて、そこからホウキに乗る。これだけはようやく人並みに使えるようになった。と言ってもまだたまにバランスを崩して、この前のように墜落するまではいかなくても、結構危なかったりするのだが……。
今回もどうにか頑張って銀時の家まで辿り着いた。窓の外から中を覗くとちょうどソウゴと目が合ったので、手でちょいちょいと手招きする。
出てきたソウゴに銀時を怒らしたこと、もう家から出ていけと言われたことを告げると、彼は肩を竦めてあっけなく、仕方ねェですねィと言っただけであった。
シルヴァーナに挨拶をしようと思ったが、どうしても彼女に会って話すことが出来ない。そんなことをすれば、きっと泣き喚いてしまう。そんなことをすれば、きっと彼女も困るだろう。
トーシローはそのまま姿を消すことにしたのだ。




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