銀時×土方2

□天災は忘れたころにやってくる
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銀時は声にならない悲鳴を上げた。
この顔だけは可愛いおバカは、なんということを宣言してくれちゃったんだ!!
男が男の嫁になどなれるはずがない。冗談だと言って通じるだろうか、と恐る恐る桂を見ると、彼はまるで魂の抜け殻のようになっていた。

「ヅラ……!おい、ヅラ!!」

トーシローを振り解いて桂を揺すると、彼の魂はようやく戻ってきたようだ。ハッとして銀時を見た。

「嘘だから!冗談だから……!!」
「嘘じゃない!!」

桂を揺すりながら必死になってそう訴えると、後ろからトーシローが再び腕を取ってきた。それを再度振り払い、キッと睨み付ける。

「オメェ、うぜェ」
「ぎ……」
「俺はオメェなんざ嫁にしねェって、何度言やぁ分かるんだ」

はっきりキッパリ言い切ってやると、途端にトーシローの瞳が潤み出した。しかし銀時はそれでも、毅然と睨み付ける。
いつもここで退くからダメなのだ。ここで尻込みするから、なぁなぁで終わっていつまでも纏わり付いてくる。このおバカははっきりと言葉に出して言ってやらないと、きちんと理解できないに違いない

「銀時は、俺が嫌い?」
「嫌いだ。はっきり言ってウザ過ぎる」

少し言い過ぎたかとは思ったが、ここは心を鬼にしなければならない。銀時は決してトーシローと結婚するつもりはなかった。そんなつもりは皆無といってもいい。
なのにこのままズルズルいくと最終的には済崩しで事を運ばれそうだし、そうでないにしても余計な期待を掛けさせるだけ逆にトーシローが可哀想だ。
だがそれでも、いざ目の前でポロポロと涙を零されると、流石に心が痛む。

「ごめ……」
「謝んなら、とっととうちから出てけよ」

痛む胸に気付かない振りをして銀時が冷たくそう言い放つと、トーシローは次から次へと溢れ落ちる涙を拭うこともせずに、口唇をきつく噛み締めて、くるりと踵を返した。
そのままガックリと肩を落とし、とぼとぼと歩く後ろ姿は見ている者の同情をひどく誘うが、銀時は拳を握り締めて思わず出そうになる手をどうにか押し留める。

 ここで引き止めて、どうすんだ

これでいいのだ。自分は彼に出て行って欲しいのだから……。
恐らく母は煩いだろうが、そんなことは知ったことではない。可愛い娘が欲しいなら、それこそ銀時が可愛い嫁をGETするまで待てばいいのだ。

 何も男でなくったっていいじゃん

確かにトーシローはこの上もなく綺麗で可愛い。あんなに一途に想われるのは、気持ちの悪いものではなかった。
それでも、やはり男と結婚となると話は別だ。

「いいのか?」

一連の話を隣で聞いていた桂が心配そうに話し掛けてくるのに、銀時は「いいんだ」と素っ気無い返事を返した。





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