銀時×土方2

□家庭円満の秘訣
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その日は結局、別の部屋で一夜を過ごすことにした。
いくら寒くないとはいえ、なぜ満天の空の下、寝なければならないのか。銀時はなんだか物悲しくなり、部屋を移ったのだ。
明日は朝から日曜大工に勤しまねばならぬだろう。夕方には両親が帰ってくる。それまでにこの状況を打開しておかねば、報復が恐ろしい。
はぁ、と大きな嘆息を吐きながら、ちっとも進まないレポートを前に、がしがしと頭を掻いた。

「銀時。寝ないのか?」

後ろからおずおずと声が掛かる。
銀時は声の主をじろりと睨み付けた。トーシローはびくりとたじろぐ。
元はと言えば、目の前の彼が原因なのだ。恨みがましい顔をしたくもなる。

「お、俺、手伝う」
「いい!お前が関わると碌なことない!!さっさと寝てろ!!」

第一レポートなど、手伝ってもらうなどできるはずがない。一喝するとトーシローはしゅんと項垂れて、布団の上で正座した。
その姿は叱られた仔犬のようで同情を誘うが、構っている場合ではない。
銀時は机に向かい、レポートと悪戦苦闘を始めようとした。
しかしその手がふと止まる。シャーペンのペン先を、手で止められたのだ。その小さな手はとてもではないが、人間のものではない。
憮然と銀時は、その手の主を見た。

「なに?」
「あれでもちったぁ、反省してんでさァ。もちっと優しく言ってやってくれやせんかね?」

ボソボソとトーシローには聞こえないように、ソーゴが囁く。言われて振り返ると、トーシローは項垂れたまま、じわりと眦に涙を溜めていた。

「泣かすと、また来やすぜ。例の親バカが……」

はっきり言って脅迫だ。しかしそれだけで済まぬところが笑えない。

「マジでか?」
「土方さん泣くところ、近藤さん有りでさァ」

実に傍迷惑な親子だ。銀時の口許がぴくぴくと引き攣った。しかし銀時の言葉一つで、この町一つが丸々消滅させられては堪らない。
銀時はぐっと拳を握り締めて、振り返った。

「このレポートは、人に手伝ってもらえるもんじゃないんだ。だからオメェは気にせず寝ていいよ」
「でも……」

極力努力して出した優しい声に、トーシローはがばりと顔を上げ、潤んだ瞳を銀時に向けた。それにうっと詰まりながらも、銀時は言を継ぐ。

「オメェが寝てくれねぇと、気が散って出来ないんだよ。頼むから、寝てくれ」

はぁっと息を吐き投げ遣りにそう言うと、トーシローは瞳一杯に涙を溜めたままそれでも頷き、もそもそと彼用に敷いてやった布団に潜り込んだ
ぐずぐずと鼻を啜るような音がしたが、銀時はそれを聞かぬ振りをした。

「これでいいだろ」

心底疲れたように尋ねると、ソーゴは肩を竦めることで答えにした。
何でこんなことになったんだろう?
銀時はもう一度、特大の嘆息を落とした。




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