銀時×土方2

□青天の霹靂
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それは青天の霹靂だった。
いったい自分の身に何が起きたのだろう。銀時はそれを目の前に、呆然と立ち尽くした。



坂田銀時は普通の大学生だ。やる気のない、まるで死んだ魚のような眼だと評される割には、偏差値の高い大学にこの春入学した。
今まで生きてきた18年間。大きな問題もなく生きてきた。本当に平々凡々な日常だったのだ。
それがどうしてこんなことになっているのだろう?
目の前の光景が信じられなくて、銀時は頬を抓ってみる。

「いてェェェ!!!」

現実逃避の余り、強く抓ったせいでものすごく痛かった。銀時は思わずその目尻に涙を浮かべる。

「え、え〜っと。夢じゃない……?」

なら、なんだ?これは……。
散らばる木材。通り抜ける風。ふと上を見上げると、そこにはぽっかりと真ん丸月が浮かんで、まるで銀時を嘲笑っているかのようだった。
あり得ない。見上げて綺麗な夜空が見えるなんて……。
なぜならそこは、銀時の自室なのだ。先ほど風呂に入りに行くまで、見上げると古ぼけたシミだらけの天井があった、……ハズ……。
それなのに……。
そこには、何故か人間らしき物体がひとつ……。
真っ黒な三角帽子に、真っ黒な衣装。真っ黒なマント。その傍に箒が転がっているのは何故だ?!

「え、え〜っと、魔女宅のコスプレ?」

そんなわけがない。そもそも何故こんな物体がここに転がっているかが、目下の問題だろう。
思わず遠い目になりかけた。
ダメだ。ここで逃げては……。銀時は自分を叱咤して、その物体に近寄って覗き込んだ。
そして上げそうになった悲鳴を手で覆い、どうにか堪える

「か、可愛い……」

まるで闇夜のような艶やかな漆黒の髪。それとは対照的な真っ白な、滑らかな肌。鼻筋は通り、そこだけ紅を刷いたような可憐な唇が目を惹いた。瞼を閉じていてでも、その美貌は際立っていると知れる。
そういえば、と胸元を確認すると静かに上下していた。とりあえず死体ではないようで、安堵の息を吐いた。
それにしても、こんなに綺麗な生き物を見たのは初めてだ。それが何故自分の部屋に落ちているのだろう?そう、きっと落ちてきたのだ。そうでなければ、この天井の穴が説明できない。
しかし、どこから……?
疑問符で一杯になった頭はキャパシティを越えたのだろう。それ以上の思考を拒否していた。

 もう、何も考えるな……っ

銀時はまるで磁石が引かれ合うように、顔を寄せる。
そして、その誘うように僅かに開かれている口唇に、まるで羽が触れるようなキスをした。




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