銀時×土方2

□天使の卵 1
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その日。万事屋の一日は呼び鈴から始まった。
勿論寝汚い銀時も神楽も一回鳴ったぐらいで起きるわけがない。それは連打され、尚且つどんどんと扉が壊れるかと思うほど叩かれてようやく目を覚ました。

「ヘイヘイ。誰ですか、こんな朝早くから……」
「おう、金時ィ!おったがかぁ!」

扉を開けるとそこに満面の笑みを湛え、立っている男が一人。一瞬の間の後に銀時は返事をすることもなく速攻で扉を閉めた。

「ちくっと待て!!金時ィィィ!!!」
「やかましいィィィ!!俺ぁ銀時だって、何回言やぁ分かるんだァァァァ!!」

扉は再び開けられ、坂本の頭に飛び蹴りが食らわされた。そして……

「土産ちや」

事務所兼居間のソファーに血塗れで腰を降ろした坂本は、それでもニコニコと笑みを浮かべてテーブルの上にどんとそれを置いた。
寝着を着替えた銀時と神楽は、それをじとりと眺める。
それはどこからどう見ても、どこの角度から見てみても、卵だ。しかも恐らくダチョウのものほどの大きさのある卵だ。
坂本をもう一度見てもニコニコとしている。これは素直に礼を言っていいものなのだろうか?

「なんだ?これは……」
「やき、土産やとゆうちゅうろう?」
「それは分かってんだよ!卵?卵が土産か?うちはそんだけ貧乏だって言いたいのか、コノヤロー!!」

卵は栄養価が高い。確かに嬉しいのだが、どうにも素直に喜べない。
それに坂本はようやく得心いったようだ。ぽんと手を叩いた。

「これは天使の卵ぜよ」
「「……はぁ?」」

坂本の言葉に銀時も神楽も素っ頓狂な声を出して、その卵を見詰める。
一通りの説明を終えた坂本は、すぐに船に帰っていった。本当に土産を渡しに来ただけらしい。かなり珍しいものらしく、きっとそれを手に入れたことを自慢したかったのだろうというのが、万時屋の見解だった。




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