nobel(その他)

□優しすぎる君(塚跡)
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その日、初めて俺は国光の入院している病院を訪れた。
部屋に入ったら、アイツは凄く驚いた顔をしていた。
まさか越前が俺に話すとは思っていなかったのだろう。
「…越前から、聞いた。」
「そうか…」
国光は、痩せて少し細くなっていた。
「なぁ、国光…っ、何で俺に話してくれねぇんだよ…っ!?」
「お前に…無駄な心配をかけないためだ。」
「無駄じゃねぇよ…国光のことは、全部無駄じゃねぇんだよ…っ」
「景吾…」
国光の手が俺の頬に触れる。
「俺が悪かった…だから、泣かないでくれないか?」
気が付いたら俺の目からは涙が溢れていた。
「…国…光の…バカ…ッ」
「本当に、悪かった……」
国光は俺を優しく抱きしめ、あやすみたいに頭を撫でていた。

暫くして落ち着いた俺は、本題を持ち出した。
「あのな…ワクチン…完成しそうなんだよ。」
国光が少し目を見開く。
「それは…本当か?」
「あぁ、本当だ。国光…助かるかもしれねぇんだよ!」
報告をうけた時には、それはもう言葉も出ない程に嬉しかった。
しかし、言葉に出してみるとその二倍くらいに嬉しくて…
「景吾…、ありがとう。」
国光の目から一筋の涙が零れ落ちた。
その時、ドアの開く音、それと幼い声がした。
「おにーちゃんをなかせちゃダメだよ!」
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