nobel(立海)
□蓮の花(柳赤)
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ゆらゆらと、風に吹かれて蓮の花が揺れる。
水の上を頼りなさげに漂い、時に近付き、離れていく。
時刻は午後11:00。
こんな時間に公園などに居るのは、泥酔した人達と
彼、切原赤也のように酔いを醒ましに来ている人達ばかりである。
(最悪だ…)
気だるい頭で思う。
もともと、赤也は酒に強い方ではない。
飲めるが1杯が限度…というところだ。
しかし、“彼女にフラれた”と先輩が酔って泣きながら雪崩れ込んできたのが運の尽き。
あっという間に酒を飲むと言うより酒に飲まれてしまった。
「フラれた…か」
なら、自分達の関係はどうなるのだろう。
中学を卒業し、お互いに忙しい日々を過ごす内に段々と離れていった心。
微かな波に、揺れながら少しずつ遠ざかっていく蓮。
まるで、今の自分達を表しているようで
妙にこの蓮が憎らしくなった。
「蓮…って言えば」
あの人の名前のれんじの“れん”も蓮だった。
静かで、どこか神々しい彼にぴったりだ、とずっと、今も思っている。
「だけど、こんなに頼りなくはねぇよなぁ。不思議な雰囲気の人ではあるけど。」
クスクスと笑いを溢しながら手近な蓮をぴん、と弾いてみる。
すると、先程離れた蓮とぴったり寄り添うようにくっついたのである。
何だか分からないが嬉しく、愉快な気持ちになって、赤也は更に笑顔を深くした。
(離れても、またくっつけるんだな)
そんなことを考えながら、公園を後にしようとした…
が、その時、公園の前に見覚えのある人影が現れた。