nobel(氷帝)

□ある雨の日(跡日?)
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教室から外を見ると、五時間目から相変わらず雨が降り続けていた。

寧ろ、雨足が強くなった気さえする。

軽く溜め息をつき、有り得ないと分かっていながらも雨が止まないかともう一度外を見た。

(ったく…こんな日に限って運転手が休暇とは…ついてねぇ)

天気予報では晴れだった筈なのにいきなり降りだした雨。

傘を持ってきていない奴も多いのだろう。

殆どの奴等が雨の中、走って帰っていた。

これ以上教室に居ても仕方無いと思った跡部は、もう一度深く溜め息を着き、鞄から折り畳み傘を取り出し、昇降口へ向かった。

昇降口で靴を履き替え、雨の様子を見ようと顔を上げると、視界に見慣れた二年生が映った。

「日吉!」

「…跡部さん」

「傘ねぇのか?」

彼は今にも雨の中へ走り出そうとしていたところで、少しばつが悪そうに答えた。

「はい…」

「仕方無ぇ、入るか?」

「いえ…でも…」

「うるせぇ。俺様が入れてやると言ってんだ。つべこべ言わず入れ。それに、濡れるよりはましだろう?」

跡部がそう言えば、日吉ははいと小さな声で言い、素直に跡部の傘に入った。

二人が学校を出ようとした時だった。

前を傘をさして歩いていた一年生が、日吉に気付くと振り返り、軽く会釈した。

「あーん?知り合いか…?」

そこまで言った時、気付いた。

一年生のさしている傘が日吉がいつも使っている傘に似ている…いや、そっくり同じである事に。

「日吉、あの傘…お前のじゃねぇか?」

「…たまたま同じ傘を使ってたんじゃないですか?」

そう言いながらも照れたように少し俯く日吉。

「そうか。」

跡部はふっと微笑み、日吉の頭をクシャッと撫でた。

―ある雨の日のこと
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