バトテニ
□バトテニ3 〜バトルロワイアル2〜
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「榊監督……?」
驚きを隠しきれずに呟く跡部さん。
榊さんの後ろにはやっぱり軍服の奴等。
でも、様子が違う。
俺たちみたいに無理矢理連れてこられたって訳じゃない感じだ。
「…何で…監督…?」
「一体何がどうなってるんだよ!?」
パーン
乾いた音が鳴る。
後ろを向くと壁に小さな穴が開いている。
「私語は慎め。」
銃を手に持った榊さんが何時もと何ら変わらないような口調で言う。
一瞬にして教室に緊張がはしる。
「これより、バトルロワイアルの説明を始める。一度しか言わないから、しっかりと聞くように。」
榊さんの口から発せられた言葉に全員愕然とする。
バトルロワイアル法…通称BR法。
腐った政府が作った、狂った法律。
「まず、諸君には最後の一人になるまで殺し合いをしてもらう。」
殺し合い…その言葉を聞いても全く実感がわかなかった。
正直な話、昨日…いや、つい数時間前まで、そんなもの遠い世界の話だと思っていた。
「ルール説明をする。このようなデイパックが全員にランダムに配られる。中には、水、食料、地図、武器が入っている。なお、武器はデイパックによって全く違うものだ。
また、禁止エリアが存在する。禁止エリアは時間と共に追加されていく。禁止エリアに入ると、その首輪に内蔵された爆弾が爆発する。」
教室が騒然とする。
首輪を外そうとしてみる者、混乱している者、様々だ。
その中、桃先輩が榊さんに向かって叫ぶ。
「冗談じゃねぇ!俺等は仲間同士で殺し合いもしねぇし、アンタ等の言いなりにもならねぇよ!」
「私語は慎めと言った筈だが。」
榊さんが何かのリモコンを桃先輩に向けて、ボタンを押す。
ピッピッピッピ…
無機質な音が響き、首輪についたランプが点滅を始める。
「…っ、んだよ、これ…っ!!」
「桃!」
「桃城!」
先輩達が桃先輩に駆け寄る。
「あまり寄らない方が身のためだろう。爆発に巻き込まれるぞ。」
その言葉に思わず動きを止める先輩達。
「嫌だ…、まだ死にたくない…っ!うわあぁぁぁぁ!!」
バーン!
爆発音がした後、その場に残っていたのは血の海と飛び散った肉片だけだった。
全員が怯えたような表情で目を逸らす。
「早く席に戻れ。」
少しの慈悲も無い命令に肩を落として席に戻っていく。
その中で、英二先輩だけがその場に残っていた。
「おい、英二…「…桃を…、桃を返せ…返せよぉ!!」
榊さんに殴りかかろうとする英二先輩。
「菊丸っ!」
鋭い声が聞こえた。
見ると、手塚部長が英二先輩を睨むように見つめていた。
「菊丸、席に戻れ。」
「でも…」
「戻れ。」
英二先輩が席に戻り、座る。
全員にほんの少し安心したような空気が流れた。
「…このように、政府に楯突いたり、ルールを違反したり、逃げ出そうとした場合も爆発する。また、1日にひとりも死亡者がでない場合と2日以内に生存者が一名にならない場合、全員失格とみなし、全員の首輪が爆発する。以上だ。質問はあるか?」
こんな状況で質問なんて出来るものじゃない…そう思ったけど、何と二本の手があがった。
「ではまず先に…白石、質問を言え。」
「他の先生達はどうなったんや!?オサムちゃんは…っ?あと、俺等の親は…兄弟は…!?」
「それが目上の者に話す態度か?」
「……っ、俺等の…顧問の先生方や家族はどないなったんですか…っ?」
白石さんは屈辱に耐えてるかのように顔を歪めていた。
「政府に楯突くものは…、殺した。」
皆驚き過ぎて無言だった。ということは、自分達の顧問や家族は既にこの世に居ないということだ。
「では、次、跡部。質問があったんだろう?」
「お前は何で此処に居るんだ?何で政府についてんだよっ?」
「お前はもっと礼儀を弁えた人間だと思っていたが。」
「敬語を使うのは目上の対象だけだ。ついさっき、俺はお前を目上の人間ではないと判断した。理由はこれで充分か、あ〜ん?」
「…それは残念だな。だが、そのプライドに免じて殺す前に特別に教えてやろう。俺はもともと、政府と精通していた。」
「チッそういうことかよ…」
「…跡部、逝ってよし。」
今日聞いた、2度目の銃声。
だけど、今回は人を狙って撃ってる。
思わず目を閉じた。
ドサッ
倒れる音が聞こえた。
…跡部さんは座ってた筈…倒れる…訳が無い。
そーっと目を開く。
すると、跡部さんの前には樺地さんが倒れていた。
「樺地…お前…何で…っ?」
樺地さんの首輪がカチッと音を立てて外れ、床に落ちる。
「…言い忘れていたが、その首輪が外れる条件は2つ。一つ目は、優勝すること。二つ目は…、死亡することだ。」
跡部さんはまだ信じられないというように樺地さんを見つめている。
「さぁ、バトルロワイアルを始める。途中でアクシデントが起こったが、致し方ないことだ。」