nobel(その他)

□優しすぎる君(塚跡)
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致死率98%、まだワクチンも未完成、つまりかかったらお仕舞い。
そんな病気が今、日本中にじわじわと広がっている。
でも、そんなこと、俺には関係ない話だと思っていたんだ、あの日までは…

部活前にいきなり鳴り出した携帯。
越前からの着信。
越前は俺が話す前にいきなり話し出した。
『…部長からは言うなって言われてるけど、やっぱアンタには言っといた方が良いと思って』
「おい、何の話だ。」
唐突に訳の分からない事を言い出したアイツの声は、微かに震えていた。
『いい?落ち着いて聞いてよ。部長…ワクチンが完成しない限り、余命2ヶ月…だって…』
一瞬、自分の耳を疑った。
致死率98%、ワクチンは未完成、死亡者多数…そんな言葉が、頭の中をぐるぐると回る。
俺には関係ないと思っていた。
ニュースの中だけでの話だと思っていた。
それが、まさか俺から一番大切な人を奪おうとするなんて、考えもしていなかった…

それから、跡部財閥はワクチンの完成にかなりの労力を注ぎはじめた。
勿論、アイツを助ける為に。
「…国光…っ」
ワクチンの研究は進んではいるが、このままでは2ヶ月に間に合わない。
改めて自分の無力さに気付き、それを悔やみ、呪った。
俺は…無力だ…
丁度その時、
「景吾様!ワクチンの研究が大幅に進みました!この調子なら1ヶ月後には…」
一筋の、光が見えた。
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