Astral Dircord

□凛句
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ふと意識が舞い戻る。
目の前には憎きあの男が立っている。

「此処は……」

思い出せない。センリツと別れた後、家路を歩いていた。
そこから記憶があやふやだ。

「やっと醒めたか」
「クロロ……ルシルフル……いったい何を……」
舌が上手く回らない。
頭が酷く痛い。

†††††††††

ぼんやりと色んな記憶が全身を巡るような感覚に陥る。
優しかった両親、仲が良かった弟、里のみんな。そして、それら全てを奪った幻影旅団“蜘蛛”
瞳を奪われた同胞の亡きがらが無念を叫ぶ。

一度だって忘れた事など無い。どんな時だって、何をしていたって。

けれど私は知ってしまった。
友情というものを。
もう2度と大切な人達を失いたくない。

友情と復讐。
天秤に架けて、重かったのは友情。

失いたくない。
自分勝手な欲だ。

無念が叫び続ける。
『本当にそれでよかったのか?』

†††††††††

「お前は疑問に感じた事がなかったのか」
「何をだ」
分からない。何が言いたい。分かりたくない。

「何故、自分だけ生き残ったのか」

何故だ。思い出せない。あの日の景色が霞む。

燃え上がる家。無惨に棄てられた亡きがら。

何故だ。何故、私だけ生き残った。

さぞ面白そうに笑う十字架の男。
「分からないだろうな。俺の気まぐれなのだから」

気まぐれ……?
気まぐれのおかげで私は復讐をしようとしているのか?

全ては気まぐれ?

気まぐれのおかげで苦しんでいるのか?
何もかも失くなってしまったのか?

†††††††††

目の前の男に飛びつこうとする。

が、出来ない。
手錠と足枷が邪魔をする。

眼の前が緋に染まる。景色が霞み、また頭にもやがかかる。

どうして……

それだけを繰り返し、繰り返し呟く。

†††††††††

「さぞ、ショックだったようだな」

奴の顔を見上げ、睨みつける。

「お前は俺のコレクションだ」

何が言いたい。なにが目的なのだ……

「あの時狩るには少し早過ぎた。期は熟した。お前は今日から俺のコレクションだ。そして蜘蛛になれ」
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