□車輪の唄
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─今は、まだ薄暗い早朝だった…─
錆び付いた、僕の自転車。
悲鳴のようにキィーキィーと音を上げながら、僕達は明け方の駅を目指していた。
君は後ろで楽しそうに笑うけど、ペダルを漕ぐ僕の顔は必死だった…
けどね、寄りかかっている、君から伝わる確かな温もりがとても心地よかったんだ。
僕は彼女に言う。
「寒くない?」
笑いながら答える彼女。
「くっついてるから、スゴい温かい」
とても幸せだった。
線路沿いの道にたどり着いた。
ここの上り坂はとてもキツい…
けど僕は知りながらこの道を選んだんだ。
それでも楽しそうな彼女。
「がぁ〜んばれぇ〜」
そんな声をかけられて、必死で立ち乗り状態で頑張る僕。
「くそぉ〜」
ペダルを漕ぐ足に、さらに力が加わった。
「もうちょっと、あと少しだよっ!!」
そう言う彼女は、必死な僕を楽しそうな声で励ます。
僕は頑張った。
どうしても最後に見せてあげたいものがあったから…
「それにしても静かだね…」
息を切らしながら彼女に話しかける。
「うん…でも、楽しい」
笑う君…
「まるで、世界中に二人っきりみたいだね…」
楽しそうにいる彼女が羨ましくて、聞こえない位小さな声でこぼしてやった。