頂き物
□内に秘めたる思いは……
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おまえを護れる限り護りたい。そう思った。
そう……思ったんだ。
内に秘めたる思いは……
修羅ノ国でおまえと三度目に出会った時。途中からおまえは“おまえでは無い何か”に操られているような……そんな様子になったように感じた。
あの時、あの状態のおまえと直に戦ったのは俺だけだったから、どういう状況なのかも判断しかねた(魔術師なら直にやり合えば判断が出来ていたかも知れないが。)。
だが、普通じゃない。それだけはわかっていた。
その後直ぐに白まんじゅうの強制移動で紗羅ノ国に戻った時、過去と未来を行き来した為に起きた事で全員の意識がそちらに向けられあいつに話しかける機会を失った、それでなくても他の仲間が居る場所で話すべき話ではないと考えていたが。
次に移動した世界で、やっと二人っきりで話す機会が出来た。
「小僧……」
小狼の部屋の戸を数回叩いてから返事も待たずにガチャリと戸を開け中に入る。
「……黒……鋼さん」
部屋に入ると小狼は寝台に腰かけたまま顔をこちらに向けた。
「話があるんです」
「話があるんだ」と俺が言おうとした瞬間、小狼の方から話を振られた。そのまま隣に腰かける様に促され、小狼の隣に座る。
「なんだ」
「修羅ノ国で三度目に黒鋼さんに会ったとき……」
小狼にしては珍しく言葉を選ぶような、自分で言おうとしている事を確かめるような言い方で紡がれた言葉の先を見越して口に出す。
「『身体が勝手に動いた。』か」
「……はい」
自分が感じていた事を肯定されて、『やはりそうだったのか』と言う気持ちと『何故だ?』と言う気持ちが綯い交ぜになる。
「…………」
「……今までにも……」
「……はい」
「今までにもこんな事はあったのか?」
「……いいえ。多分今回が初めてだと思います……記憶を失くす以前の事はわかりませんが……」
そう言う小狼の体が小刻みに震えている。落ち着かせるために腕を背中に回そうとした時、小狼がいきなり声を荒げた。
「おれはあの時、黒鋼さんを殺してしまっていたかもしれない……っ」
「…………」
「あの時は、直ぐに体の自由が利くようになったけど……あのまま身体が勝手に動いていたら……」
「おれは黒鋼さんを……」そう言いかけた小狼の言葉を遮る。伝えなければならない事を伝えるために。
「俺は死なねぇ」
「黒鋼……さん」
「俺はおまえを、小狼を護るために絶対死なねぇ。俺が死ぬのは知世姫を護って死ぬときか、おまえを護って死ぬときだ」
小狼の目を見つめながらはっきりと告げる。
「それに、もしあの時俺が死んでいたとしても、それは俺が未熟だったってだけの事だ」
「でも……それでも……」
縋るような格好になりながら小狼が言葉を紡ぐ。血を吐くような思いで口に出しているのだろう、そうする事で自分を戒める為に。
そんな小狼が痛々しくて、これ以上自分で傷付ける事の無い様に遮る。
「大体、あの時俺は『殺す気で来い』って言ってただろうが、だから……良んだよ。
これ以上自分を責めるな。それに勝手に身体が動いていたのならおまえの所為ですらねぇだろうが」
「ごめんなさい」
「謝んな」
そう言って小狼の背中に腕を回す。
「……ありがとうございます」
「? 何がだ?」
「許してくれた事です」
「許すも何もねぇだろ」
そう言って小狼の頭をくしゃりと撫でる。
「黒鋼さん……キスして良いですか?」
「…………」
突然の事に面食らって固まっていたら肯定と取ったのか小狼が顔を近づけてくる。
最初は触れるだけの口付け。そこから徐々に深いモノへと変わる。
「……ん……ふ……ぁ…………」
そのまま寝台に押し倒される格好になる。ヤバイ。これはヤられる……