捧げ物1

□宣戦布告
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大学の同期生に気になる人がいる。
背が高くて、いつも悠然としていて、あまり人間付き合いが得意じゃなさそうなんだけどそれなりにモテて。
一言で言ったら「格好良い」かな。
紅の瞳はいつも真直ぐだし、勉強できるし運動もやれるみたいだし。
男から見ても女から見ても理想に近いと思う。
まあ彼は彼なりに欠点だってあるだろうけどね。
とにかく、そんな人に俺は思わず魅了された。
相手は同じ男のくせに、初めて会った瞬間何かが弾けた錯覚に襲われた。
これが世間一般に言う「一目惚れ」だろうか。
おかげで今では完全に彼のひっつき虫。

「黒りーん!お昼どっかで食べるー?」

「その呼び方やめろッ!そこらで済ませりゃいいだろうが」

「んじゃあさー、俺この前近くで美味しい喫茶店見つけたんだー。一緒に行こ?」

「てめぇ一人で行け」

「つれないなぁ〜ご飯は大勢で食べた方が美味しいんだよー」

人懐っこそうに笑顔を貼りつけていつも彼の隣を陣取る。
始めは黒鋼もうざったそうにしてたけど、最近は慣れてきたみたいで俺が近寄っても振り払わなくなってきた。
それを良い事に時々からかったりすればその反応がまた面白い。
おかげで更に彼に惹かれている俺が今此処にいる。

「黒たん、今度二人で遊びに行こうよー」

「なんで俺となんだよι」

「いいじゃん友達なんだからさ〜」

まあそのうちオとすつもりだけどね。
その点はあえて口には出さない(出したら警戒されるだろうし)

「ねえ行こーう?今週の日曜日とか」

「……日曜は無理だ」

いつもの笑顔を浮かべて目の前に座っている彼の顔を覗き込む。
だけど少し間が空き、黒鋼の口から出てきたのは「NO」。
想定していなかったわけではないけどやはり少し肩を落としてしまう。

「別の約束があるんだよ。だから無理だ」

「ありゃりゃ、先客がいたんじゃ仕方ないねー」

本当はそんな約束放り出してほしかったけどそんな事到底言えないから渋々引き下がった。
かといってどんな約束なのか、相手は誰なのかなんて聞ける立場でもない。
さっき自分から「友達」発言してしまった事を少し後悔した。

「それじゃあその次の日曜日でいいや」

「意地でも俺を引っ張っていく気か」

呆れたような少し疲れたような口調ににっこり笑う。
君とデートしたいのに肝心の君がいないと意味ないじゃない、心の中だけでそう呟いて。
少しでも好感度を上げときたい俺にとっては当然の考え。

だって好きだもん、黒鋼の事が。
もし今現在君に恋人がいて、その約束とかいうのがデートだったとしても奪い取れる自信がある。
まだ彼の事をあまり知らないけど、この気持ちだけは誰にも負けない自信がある。
そこらの女には負けない自信があるんだよ。



そう、『女』には…。









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