捧げ物1
□酒のせいにしてしまえ
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俺の名前は黒鋼。
堀鐔学園で教師をしている。
「うふふ〜、もう逃げられないよー☆」
………誰かこの変態をなんとかしてくれιι
運動の得意な体育教師が非力そうな理科教師に押し倒されるなんて事があるだろうか。
今まさにその状況下におかれている俺が否定出来るわけもないが…。
しかし相手は男なわけで。
そして俺も生物学的に男として生まれた。
何かの勢いで押し倒した構図になる、ということはありえるかもしれないが、まさか意図的に野郎が野郎にこんな事をするなんて想像するわけがない。
「何のつもりだテメェ」
「そんなこと、言わなくてもわかってるくせに〜」
俺の上で楽しそうに話すコイツを睨み付けるが効果はないようで。
そんな俺達が今いる所は、何処かの公園付近に止められた車の後部座席。
数十分前までは教師軍で飲んでいたのだが、家の方角がたまたま同じだった俺とコイツが一緒に帰ることになり奴の車に乗り込んだ。
それがそもそもの間違いだったんだ。
酔いが回ってきたのかついうたた寝してしまい、違和感で目が覚めれば運転席にいた理科教師が上に乗っかっていて。
押し退けようとしたが両腕は何時の間にか奴のネクタイで拘束され、頭上で固定されていて既に身動きが取れなかった。
必死になってあがく俺を上から見下ろしていたコイツは楽しそうに俺の着ていた服を剥いでいく。
ジャージのファスナーを下まで下ろし、ワイシャツを捲って舐めるように躯を視姦される。
その間も俺は懸命に目の前の相手を睨み続けていた。
「ひゅー、綺麗なカラダv」
「喧嘩売ってんのか(怒」
肌の色とか質とか、明らかに自分の方が良さ気なくせにそんな事を言われれば腹が立つ。
だが今はそんな事を気にしている場合ではなく、なんとかコイツの手から逃れようと身をくねらし続けた。
そんな俺を相変わらず楽しそうに見下ろしていた奴は特に何も言わず、いつもの笑顔を見せたと思ったらあろうことか胸板に自分の唇をあてがう。
ザラザラした湿り気のある舌で舐められると背中に不思議な感覚が走った。
「てめ…!一体何がしてぇんだッ!」
「ん〜〜…ナニ?」
あっさり答えたその言葉に「マジかよ」と思わず呟いてしまった。
男が男を襲って何が楽しい?
もしかしてこの男も酔ってるんじゃないんだろうか。
痛みが出てきた頭で必死に考えても現状が変わるわけではないが。
「俺もちょっと酔ってるのかもー、いつもならこんな事、絶対しようなんて思わないしー」
いつもより崩れた表情に青筋が立ってしまう。
予想した通りの発言をされて自分で自分を同情せざるを得ない。
酔った勢いで野郎に犯されてたまるか。
「自覚があるなら退け。そして解け」
「それがねー黒たん先生。嫌なんだー」
少し困ったように眉を下げるコイツを更に鋭く睨み付ける。
「俺ねー、ずっとずっと前から黒りん先生の事好きだったんだー」
「はあ?それも酔いのせい…」
「ううん、マジ話」
言葉を遮った奴の眼は、顔に張りつけた笑顔と違って真剣そのもの。
否定しようとした俺はそれを見て続きを言えなくなった。
いきなりの告白、相手は同じ教師でしかも同性。
性格はまるっきり違うが別に仲が一段と悪いわけではない。
俺にないものをコイツが持っていて、興味を持った事も幾度となくあったのは確かだ。
しかしいきなり好きと言われれば思考回路が停止してしまう。
ありえない
奴の想いを否定する言葉が喉まで出てき、ぐっとこらえた。