捧げ物1

□君となら
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ただ資料を運んできただけのはずなのに。
なぜこんなことになってしまったのか。





「ん…ぅッ」

気付けばファイと星史郎に挟まれ、立ったまま躯のあちこちを撫で回されている黒鋼。
相手が力のある男で、しかも二人がかりとなると容易に逃げ切ることができず。
全力で抵抗するものの何の意味も成さないで、されるがままにセクハラ行為を受けていた。

「お前ら、サイアク…!」

「はっきりさせない黒様が悪いんだよ〜?」

何の悪怯れもない口調の男をギロリと睨むが大して効果はなく。
規定されている制服の上から胸を鷲掴みされ、痛さでつい顔を歪めた。
しかしその腕を掴んでも放そうとはせず、感触を楽しむように揉んでいく。
後ろにいる星史郎からは服の上から腰などを撫でられ、気持ち悪さに思わず鳥肌が立った。

「いい加減選んでもらえませんか?」

「ッ何、を…」

「僕か、彼か、それとも別の男か」

言っている意味がわからず目を細めれば両サイドから落ち込んだような溜息。
それでも動かす手は休めずに相変わらず黒鋼の躯の感触を楽しんでいる。

「やっぱり眼中にないのかー、俺達って」

「だから何の話だッ!そしていい加減放せ!」

理解出来ない会話に更に怒りが募り、声を荒げる。
そうしたらあっさり触れていた手を放され一瞬出遅れてしまった。
それが仇となり、次の瞬間肩を掴まれて力一杯に会議用の机に押し倒されてしまう。
抵抗する間もなく素早く回り込んでいた星史郎に上から両腕を押さえ付けられ、身動きが取れなくなった。

「なんでこんなにアタックしてるのにわかってくれないんだろうねー」

「僕達はいつも、貴方に振り向いてもらいたいと一生懸命になっているというのに」

「でもさすがにここまでやれば、鈍感な黒様もわかるよね?」

正面から被さってきたファイの眼が不思議な光を宿したことに気付き、途端恐怖が黒鋼を襲う。
星史郎を見ると彼も同じような瞳をしており、本気で危機感を感じた。
セクハラの域ならまだ良かったかもしれない。
手を振り払って此処から飛び出し、安全な場所まで逃げることができたかもしれない。
しかし彼らが今からしようとしているのはそんな生易しいものではないだろう、直感がそう教えた。

「お前ら、正気か」

「恐らく狂ってるでしょう。貴方のせいで」

「俺達黒様が誰よりも好きだから、盲目になっちゃってるんだ」

スカートの中に手を侵入されビクッと反応すれば、両腕を片手で押さえ付け直して顎を上げさせられる。
拒むように堅く目を瞑ると唇に温かい何かが触れるのを感じた。

舐められる感触。

足の付け根を撫で回す手触り。

二人の男に抱かれる寸前のこの状況。

黒鋼の躯を侵食していくのは快楽ではなく。





『恐怖』だった…。





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