捧げ物1

□永遠の恋人
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こうゆうのも、たまにはいいだろ…?














「なぜ突然温泉旅行なんだ」

客室でもかなり広く上等な畳み部屋で黒鋼が不審気に尋ねる。
目の前には非常に楽しそうに終始笑顔を取り繕っている彼自身の父親の姿。
庭園が見える窓際に設置された椅子に腰掛け、鼻歌を唄いそうなほどご機嫌な様子だ。

「久々に長期休暇が取れたんだ。息子と二人で旅行ってのも悪くねえかなって思ってよ」

「ふーん…」

酒の入ったグラスを弄びながら生き生きとした言葉に軽く反応を示すだけ。
他に裏があるんじゃないかと疑って付いてきたが今のところそのような行動は一切ない。
それどころか本当に家族旅行を楽しんでいるようで、さっきも年寄り臭いセリフを連呼しながらのんびり温泉に浸かっていた。
そんな父親の姿を見ていると疑うのもそろそろ馬鹿馬鹿しくなってき、気持ちを切り替える為に小さく息を吐いて、布団を敷きかけて止めていた手を再び動かし始める。
なんだかんだ言って、黒鋼も今回の旅行は楽しみにしていたのだ。

「なあなあ、そこのワイン取ってv」

「自分で取りに来いよ」

目の前のテーブルに置いていた酒がなくなったのか、火照った頬を緩めて子供みたいに頼んでくる父に呆れ。
それでもちゃんと言われた通りの物を手に取り、渡す為に浴衣の裾を踏まないよう立ち上がった。
窓際に近付き、ワインの入った瓶をテーブルに置いて立ち去ろうとした時、強い力で腕を引っ張られる。
黒鋼が気付いた時には父親の胸に抱き込まれている状態になっていた。

「や〜、風呂上がりはぽかぽかしてていいなー」

「……アンタ狙ってやがったな」

「ん?何が?」

上からニコニコと見下ろしてくる父親に今度は怒りが込み上げる。
彼はどうやら黒鋼が警戒を解く今までずっとタイミングを伺っていたらしい。
まんまと策にはまってしまった自分に思わず舌打ちし、離れようと胸板を力一杯押してみるがびくともしない。

「放せ!」

「そう拒むなって。お前もちょっとは期待してたんじゃねえのか?」

「なっ!!誰が!!」

思ってもなかった疑いをかけられ一気に赤くなってしまう。
そんな己の息子が無性に可愛く思え、額に唇を落とせば躯を強ばらせるその反応にさえそそられる。
目頭に、頬にと顔中にキスの嵐を降らせ、黒鋼を軽々持ち上げて膝上に乗せると今度は唇に自分のを重ねた。

「ふっ…ん、」

始めこそは拒んだものの、父親から与えられる優しい口付けに徐々に力が抜けていく。
酸素欲しさに薄く開いた隙間から舌の侵入を許してしまい、激しく絡めてくるその行為に腰砕けになっていった。

「ぁっ!ふ、ん…んぅ!」

腰に手を回されている上後頭部を固定され、逃げることができない。
角度を変える度に響く水音のせいで恥ずかしくなるが椅子の上ということもあって抵抗さえ出来ず、濃厚なキスの味にじわじわと侵食されていった。





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