捧げ物1
□愛しいが為に堕落して
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ずっと見てましたよ、貴方の事。
だけど貴方は僕を見てはくれない。
「心ガダメナラ躯ダケデモ」
なんて思ってしまう僕は、最低な人間でしょうか…。
「こうするとかなりそそりますね」
頭上で両腕を束縛され、着ていた制服の前をはだけさせ、躯中にいくつもの華やかな跡を付けられて下から睨んでくる黒鋼に優しく微笑む。
星史郎は隠し持っていたカメラを取出し、その光景を一枚一枚写真に収めていった。
二人以外は誰もいない静かな理科室にシャッター音が盛大な音をたてて響く。
「大人しくしていないとコレを学校中にばらまかせてもらいますから」
カメラを軽く振りながら用済みになったのか速やかにしまい、机に押し倒されている生徒の上に覆い被さる。
それでも黒鋼は拒否するように足を折り曲げ、眉を寄せて鋭く睨み続けた。
「てめえ、教師がこんなことしていいと思ってんのか」
「僕だって人間ですよ?」
「だから生徒を押し倒していいのかっつってんだ。しかも男を」
「君は特別ですから」
嬉しくない言葉をなんの恥もなく言い捨て、今すぐ蹴りを入れてきそうな足を押さえにかかる。
それに舌打ちをして縛られている腕を動かしてみるがやはり無駄な足掻き。
頑丈に結ばれていて解けそうもないとわかっていながら、ここから逃げ出したいが為に懸命にちぎろうと努力した。
星史郎は自分の下で抵抗の色を見せる黒鋼にもう一度微笑んでみせ、耳椨を甘噛みしてみる。
「それとも、ファイ先生にだけその権限があると言いたいのですか?」
すぐ傍で呟けば面白い程にビクリと反応して。
躯を起こすと大きく見開いた眼が驚いたように星史郎を見上げていた。
それにクスリと笑い、彼の頬を優しく撫で上げる。
「知らないとでも思いましたか?君と彼との関係を。知っていたからこそ彼がいないこの日を選んだんですよ」
今日、ファイは生徒に遷された風邪をこじらせて学校を休んでいる。
黒鋼も授業が終わり次第彼の家に向かう筈だったのに、途中星史郎に呼び止められてここまで連れてこられたのだ。
そして無理矢理押し倒され、用意していた縄で腕を拘束されて現在に至る。
つまり星史郎は黒鋼とファイが付き合っている事を知っておきながらこのような行動を起こしているのだ。