捧げ物1

□厄日
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夢なら覚めてほしい。




そう願わざるをえない、彼にとって最悪な一日。



















迷った。
眉間に皺を寄せながらぽつりと呟くが当たり前のことに誰も答えはしない。
とりあえず足を動かしながら辺りを見渡す、だがやはり初めて来ただけあって見覚えのない場所の為に黒鋼は途方に暮れていた。



モコナの力によって新しく着いた世界。
街で聞き込みをしていると近くの森に狂暴な魔物が住み着いているという情報が入り、近寄らない限り襲ってはこないものの人々は恐怖に震えていた。
羽根かはわからないが不思議な力も感じるということで魔物退治を引き受けた一行だったが、森に入った瞬間妙に強い突風に襲われてしまい、さくらを庇った黒鋼だけが吹き飛ばされてはぐれてしまう羽目になったのだ。
いきなりの災難に舌打ちをしながら懸命に仲間を探すが、鬱蒼と生い茂る木々以外何も見掛けない。
昼間だというのに暗い雰囲気を漂わせている不思議な森を黒鋼は訝しげに思いながら進んだ。


(この森、なんかおかしくねぇか…?)


いくら日が差し込まないからとはいえ何かが引っ掛かる。
街で聞いた魔物はおろか、何故か生物の気配が全く感じられないのだ。
そして先程自分達に襲い掛かってきた奇妙な突風。
違和感のありすぎるこの森に警戒するよう目を細める。

「…あまり深追いしねぇ方が良さそうだな」

本能的に危険を感じたのか、眉をひそめながらそう判断してとりあえず小狼達を見つけようと進む方角を変えた。
その瞬間、その時を狙っていたかのように何かが黒鋼の足に絡み付き、それのせいで黒鋼は思わず地面に倒れてしまう。

「なっ!何だこれ!!」

驚いて足元を見ると、生々しい色をした枝のようなものが足首に絡み付いていた。
それは暗くて先が見えない森の奥から伸びており、黒鋼を引きずり込もうとしてるのか凄い力で引っ張ってくる。
黒鋼の方も抵抗したが更に何本かの触手が伸びてきて腕や躯に絡み付き、持っていた蒼氷をその場に残して黒鋼はずるずると森の奥に引きずり込まれていった。

「くそっ!!離せ!!」

かなり深くまで引き込まれてしまい、適わないと理解していても抵抗を止めようとしない。
暴れる黒鋼に数えきれないほどの触手が取り囲み、気持ち悪いと思った瞬間躯が宙に浮く不思議な感覚を味わった。

「何なんだよこれ!!気味悪ぃぞ!!」

意志があって動いているかどうかもわからない奇妙な生物に捕まって怒りを露にする。
もしかしたら殺されるかもしれない、そう思いもしたが触手達が自分の身に付けていたものを剥ぎ取り始めてそんな考えもすぐに吹き飛んだ。
マントと鎧を器用に脱がされるうちに顔が真っ青になっていく。

「やめろ!!」

必死になってもがくが両手両足を拘束され、もはや意味をなさない。
触手は黒鋼の衣類を全て取り払った後先端で舐めるように彼の躯を這っていった。
その感覚に今まで感じたことがないほどの快楽が押し寄せてき、無意識にビクッと反応してしまう。

「やめ…!やだ、やめろ!」

ありえないほどの快感を与えられて気が狂いそうになる頭を懸命に振る。
そんな黒鋼をよそに躯を這う触手は数を増し、彼の躯全体を撫で上げていった。
数分も経たないうちに息遣いが荒くなり、己自身が起き始める。
それを見計らったかのように一本の触手がソレに絡み付き、先端を強く刺激してきた。




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