ツバサ

□拍手文置場
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小黒ではなく小+黒。
















修行中ドジを踏んだ。
足を捻らし、歩くどころか立てる事すらできない鈍痛が走る。
座り込んでしまった俺に修行に付き合ってくれていた黒鋼さんが駆け寄ってくると「見せろ」と一言命令され。
言われた通り靴を脱げば痛々しく腫れてしまった肌が姿を現した。

「こいつはヒデェな」

そう言って黒鋼さんは辺りを見回し、手頃な木の棒を持ってくると俺の前にしゃがむ。
先日購入したばかりの服の裾を何の戸惑いもなく破いたと思うと、先程の棒を捻った足に当ててその布で固定していった。
あまりにも手際のいい作業に少し驚いてしまう。

「これでいい。立てるか?」

「あ、有難うございま……痛ッ!」

お礼を言いながら慌てて立とうとしたのが災いし、思いっきり体重をかけてしまってついよろめいた。
黒鋼さんがもし受け止めてくれなかったら今頃情けなく突っ伏しているところだ。
感謝の言葉を述べ、急いで彼の胸から体を離す。
しかしなんとか立てはするものの歩くのはきつく、修行を続けるのもましてや姫達のいる宿まで帰るのも困難だった。
早く痛みに慣れなければと捻った足に何度も体重をかけ、骨に響くような鈍い痛みに堪えていく。

「無理をするな」

「いえ、大丈夫ですこれぐらい」

いつもの態度を崩さず心配してくれる黒鋼さんに笑顔を見せ、ぎこちなく見えないよう歩いてみせる。
洞察力の鋭い彼には全てお見通しだろうけれどなるべく迷惑はかけたくなかった。
未だこっちを見ている相手にもう一度笑いかけ、痛みを堪えながら宿に戻ろうと歩きだす。
だけど俺が数歩も歩かないうちに黒鋼さんがスタスタと歩いてき、俺をあっさり抜いた。
そして背を向けて目の前にしゃがみ込む。

「黒鋼さん?」

「乗れ」

「え?でも本当に大丈夫ですから…」

「乗れっつってんだ。早くしねぇと追いてくぞ」

断ろうとしたのに有無を言わさぬ声色で、渋々彼の背中に俺の身を預ける。
落ちないよう手を回すと、さすがと言いたいほどに軽々と持ち上げられた。
蒼氷を支えにして俺を背負いながら、黒鋼さんは真直ぐ前を見つめたまま宿への道を歩きだす。

「すみません、迷惑をかけてしまって…」

「誰が迷惑だなんて言った」

遠慮気味に口を開けば素っ気なく返される。
彼のその言葉には「気にするな」という優しい意味が含まれているように思え、なんだか心が和らぐような気がした。
嬉しくて黒鋼さんの背に額を当てる。




貴方の背中は大きくて。



温かくて。



優しくて。



それでいて逞しくて。



なんて素敵な人なんだと心底思う。




以前俺は、こんな温もりを感じたことがある。



あれはそう…。





「黒鋼さん」

「なんだ」









「黒鋼さんって、お父さんみたいですね」





―――ピシッ












それ以来黒鋼さんがファイさんやモコナに「お父さん」と呼ばれると以前より更に青筋を浮かばせていた…。













======‥§

所詮こんなオチ。



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