ツバサ

□また来よう
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「父上ぇ!」


―――ドゴッ


「狽イふッ!!ι」





屋敷の中で父の姿を見つけた鋼丸。
ぱあぁっと笑顔を見せて走り寄り、背中を見せている大きな体に力一杯跳び付いた。
…が、かなりの速さだった為に半分タックルをかました形になり、領主はぎっくり腰になりかける。

「おま…もう少し父への配慮というものをι」

「いつも「俺はまだ若い」って言ってるのは父上だろ!?」

「いや、それはそうだが…ι」

ひりひり痛む腰を押さえてまだ幼い息子に言い聞かせようとするがあっさり言い返され。
それにどもっていると傍にいた側近達にまで笑われる始末。
こんな和やかな屋敷もそうそうない。

「で、どうしたんだ?」

苦笑を浮かべながらしゃがみこみ、息子と近くで視線を交わす。
そうすればにぱっと子供特有の無邪気な笑顔を見せ、ぐいぐいと父の腕を引っ張った。

「ちょっと来てくれ!」

「おい引っ張るな」

慌てて立ち上がり、腕に絡み付く鋼丸の後を小走りで付いていく(というか付いて行かざるをえない)
側近達やすれ違った侍女達はその姿を見てにこにこ微笑むばかり(なんて平和な屋敷だ)


少し屋敷の中を走り、靴を履いて裏から敷地の外に出ていく。
相変わらず手を引く鋼丸を見ながら何処に行くんだと尋ねても「もうちょっと!」と元気に返されるばかり。
そんな受け答えが数回繰り返された後に、二人は気付けば屋敷の裏にある山の近くまで来ていた。

「ここ!」

そう言って足を止め、一本の木によじ登り始める鋼丸。
領主の方はどんどん登っていく息子を暫くの間見上げる。

(猿みたいだな)

そんな事を呑気に思いながら(なにげに酷い)

「父上ー!」

かなりの高さまで登って一本の太い枝に乗っている息子から手招きされる。
それを見、何かあるのかと考えて父親も軽々その木を登っていった。
そんな貴方も猿みたいですよ領主様(無駄に温かい目)

「どうした?」

あっさり息子のいた高さまで登ると不思議そうに尋ねる。
だが、その言葉を言い終わらないうちに鋼丸の前にある鳥の巣に気付いた。
中に生まれて数日しか経っていないだろう雛鳥が、甲高く鳴いて親鳥の帰りを待っている。

「こいつらこの前生まれたんだ!俺が見てる時に!」

「へえ、そうか」

まるで身内のように嬉しそうにしている鋼丸に微笑み、頭をくしゃくしゃと撫でてやる。
自分の知らない所で貴重な体験をしていたのかと思い、もう一度鳥の巣を見下ろした。
父親鳥と母親鳥が戻ってきて元気な子供達に口移しで餌をやっているその光景がとても微笑ましい。

「母上にも見せてあげたいな」

「母上はここまで登ってこれないだろ。屋敷に戻っていっぱい話してやれ」

「うん!」

元気よく返事する息子の頭を再度撫で、時間を忘れるほど二人は長い間鳥達の様子を眺めていた。
日が暮れてくると「また来るから」と言葉が判っているかもわからないのに約束し、木から下りていく。

「また来よう、父上」

「そうだな」

大きな父の背中に背負われ、首元にギューッと抱き付きながら鋼丸は幸せそうに笑った。
そのまま静かに目を瞑り、大好きな父上の温かさに包まれながらゆっくり夢へと落ちていく。

「お」

息子が寝てしまった事を気配で感じ取った領主は、屋敷への道を歩いている時に小さく感嘆の声を盛らした。
紅に染まった空から先程まで自分達が見守っていた鳥の親達が飛んでいくのが見える。
今度はこちらを温かく見送るように。

「また来ような」

すやすや寝息を立てている鋼丸に優しくそう呟くと再び足を動かした。
自分達が帰るべき場所に向かって。









=======‥§

ギャグで始まり、ほのぼので終わる。
こんなカプ要素一切なしってのもまた珍しい。
純粋な子供を親が汚すってのは……ねえ?(何だ)
あ、文がハチャメチャなのは今に始まったことじゃないんで気になさらず(苦笑)


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