ツバサ

□オレと執事
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「おはようございます」

オレが毎朝、一日の一番始めに耳にするのは心地良い目覚まし時計の音。
AM6:30ピッタリに部屋の入り口に立ってオレを起こしてくる、愛らしい執事の声。
あと5分、と睡魔に絡み付かれたまま布団に潜れば、ピシャリと切り捨てられ問答無用で布団をひっぺがされた。

「朝でございます。そろそろ起床しなければ学校に遅刻してしまいます」
「一日ぐらいズル休みしても良いじゃーん。オレ、頭偉いしー?」
「頭が良い悪いの問題ではありません。学生は学校へ行き学問を学ぶのが勤め」
「ケチー、いしあたまー」
「何とでも」

ベッドの上でごろごろ転がっているオレを尻目に、頑固者なオレ専属の執事は洋箪笥から制服を取り出す。
昨日メイドがアイロンを掛けたそれは皺一つない。
できればアイロン掛けも執事がやってくれたらと思ったが、彼が正座をして姿勢を正し、自分が着る服の皺を丁寧に伸ばしている姿を思い浮べた途端、想像であるにも関わらず胸がときめいてしまった。
こんな恋心を抱いてから、一体どれぐらい年月が経っただろうか。

「着替えがお済みになったらお呼び下さい」

その言葉に「着替えさせてくれないのー?」と唇を尖らせれば、「寝呆けてるんですか?」と眉間に皺を寄せ一刀両断。
そっか、キミは脱がされるの専門だったねとちょっといじめたら、頭上に容赦ない拳が降ってきた。
ちょ、ご主人を殴る執事ってアリなの!?

「ッ、ッ……!相変わらず、容赦ないなー…」
「貴方の教育も私の勤めなので」

そっぽを向く執事を涙目で見上げれば、耳の先が赤くなっている事に気付いて口元が緩む。
知っている、彼が照れ隠しでつい手を上げてしまった事ぐらい。
仕事だ役目だと言っておきながら、それ以上にオレに尽くしてくれている事ぐらい。
だけど頑固で恥ずかしがり屋な執事は、なかなかそれを認めやしない。
無意識にやっている事を指摘すれば苦しい理由を付けて正当化しようとする。
そうゆう照れ屋なとこが可愛いなーと思うんだけど、さすがにさっきのは痛かった。
だから、行きすぎた時はたまにお仕置き。

「でもさっきのは痛かった。たんこぶ出来ちゃったかも…」

涙声で訴えると僅かに驚いた様子でまたこちらを見、罰の悪そうに顔を歪める。
さすがにやりすぎたと思った様で、頭を押さえてうずくまるオレの肩を掴んでくる。

「申し訳ありません。つい本気で」
「うぅ、ダメ…頭いたぃ…」
「今すぐ冷やす物を…!」
「その前に」

急いで踵を返そうとしたその腕をガシッと掴んで、そのままベッドの上に引き倒した。
何が起きたのか理解出来ず目を丸くしている彼の上に、満面笑顔で馬乗りになればしまったと身を固くする。

「お仕置きだよー。主人に噛み付く犬は調教しないとねー」
「ちょ…!?んぅ!」

顔を真っ青にさせた執事の口を噛み付く勢いで塞ぐ。
俺を剥がそうと押してくる腕は顔の横に縫い付け、半開きだった口内に侵入していく。
歯列をなぞって引っ込んでいた舌を絡めて、わざと水音を響かせながら激しく貪っていけば、たまに隙間が出来る口端から甘いくぐもり声と、どちらのものかわからない唾液が零れ落ちていった。
かなり長い間ディープをし続け、彼の瞳が水を張りだいぶとろけてきたところで、銀糸を伸ばしながらやっと解放してあげる。
ぷつんと切れたそれは、懸命に呼吸している執事の顎の上に落ちた。

「ファ、イ様…学校が…」
「頭痛いからお休みー。その原因作ったのは黒鋼だから責任取ってよねー」
「そんな…んッ!」

服の上から胸の突起を摘めばピクンッと震えた。
それがあまりにオレのドツボにはまって、未だ着ているパジャマを押し上げ始めた自分の物に苦笑を交え、下で唇を結んだまま悶えている彼に心中で謝った。

手加減できそうにないけど、許してねー。







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