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□惹き付けられるような紅に魅入られ
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衝動的に動いてしまい、気付いた時にはこんな状況。





シャワーを浴び、髪から水を滴らせながら出てきた彼は普段不機嫌そうに細められている瞳を驚きで見開いていた。
香るシャンプーの匂いはまるで媚薬のようで。
床に散らばった髪と何の惜し気もなく曝された綺麗な躯はとても妖艶。
呆然と開いている唇は水気を持って艶やかな光を秘めている。
それらを見るうち、まるで狂ったかのように心臓が刻々と早くなり始めたのがわかった。

「小僧……?」

小狼を表す呼び方をされればますます鼓動は早く、大きくなっていく。
我を忘れて突発的に押し倒してしまったものの、この先はどうすればいいのか思考回路が混乱してなかなか動けない。
ただ、今この部屋にいるのは小狼と黒鋼の二人だけで、しかもこの現状は小狼にとって非常に美味しいものだということはわかる。
なんとか冷静を保とうと努力し、静かに瞳を閉じたと思うと数秒後、再び琥珀色を彼に向けた。

「黒鋼さん、誘っているんですか?俺が貴方を想っている事は知ってるはずじゃないですか」

自分で思っていたより落ち着いた声が出て、内心驚きながらも精一杯冷静そうに努める。
一方黒鋼はというと彼の言っている事が一瞬わからなかったが、すぐに意味を承知して否定しようと口を開いた。
だがふんわりとそれを塞がれ、先程より目を丸くすれば息のかかる距離でまだ幼さを残した彼の微笑が映る。

「卑猥な人ですね。俺が躾してあげますよ」

「な…っ!」

躾という単語に焦りを見せた黒鋼の口を強引に塞ぎ、閉じ損ねた隙間に舌をねじ込ませた。
逃げようとするから顎を掴んで強引に行為を進め、口内で暴れる度に響く水音が心地よく感じられていく。

「や、め…ンッ!やめろ!」

「黒鋼さんは俺が嫌いなんですか?」

あまりにも拒むから尋ねてみれば、突然ピタッと動きを止めてしまう彼。
そんな姿を見て逆に小狼の方が驚かされる。
キスをやめて息のかかる距離で見つめていると、困ったような表情で確認するように一瞬少年を見、眉根を寄せたまま視線をそらした。

「こんな強引なやり方は嫌いだ。…けどお前自体は…嫌いじゃ、ねぇ」

嫌いなら強引に退かして斬りかかってるとこだ。
そう続ける黒鋼を呆然と見つめ続け、小狼はじわじわと幸福の波に呑まれていくのを感じていった。
嫌いじゃない、ということは不器用な彼なりの好意を示す言葉であるわけで…。

「有難うございます、黒鋼さん」

幸せそうに頬笑んでみせ、今度はふんわりと触れるだけのキスをする。
黒鋼ももう拒みはせず、すんなりとそれを受け入れた。

「なあ、場所変えねぇか…?」












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