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□素直になれない僕ら
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言葉が通じないというのは、案外不便なものだ。









「おい」

「ΡΨ?」

夜魔ノ国に落ちてから数か月。
コイツ……ファイと話が出来なくなってそれぐらい刻が経過した。
話し掛けても返ってくるのは俺の知らない国の言葉で。
通じないとわかっていながらも、それでも奴の声を聞いていたくて何事もないように話し掛け続けてみる。

「城を見てたのか?」

木にもたれ掛かっている奴が先程まで見上げていた先を見やる。
そうすれば何を言ったのか悟ったのか、再び意味不明な言葉を紡ぎだすファイ。
俺には到底話せそうにない発音で知らない音を響かせる。
始めは違和感があったソレも今では心地良い音楽のように思えた。
嗚呼、これがコイツの本当の音色なのだと。

「……なあ」

視線を戻して闇に決して溶けない白い肌、金色の糸の持ち主に再び話し掛けてみる。
お前には、俺の言葉はどんな感じで聞こえているのだろうと思って。

「ファイ」

奴に近付き、名前を呼びながら自分から口付けた。
そうすれば驚いた表情、そして口が動き音を発する。
多分それは俺の名前を呼んだのだろう。
だけどわからない、通じない。
だから、躯で伝えるしかない。



「ファイ」



愛おしく頬を撫でればその手を掴み、真直ぐ俺を見つめてくる。
蒼から黒へと変わってしまったその瞳はそれでも相変わらず温かく感じられた。
コイツに黒は似合わないなと内心失笑しながら、腕を捕らえられたまま顔を静かに近付けられたから大人しく受け入れる。

「ん…」

静寂の漂う暗い外は肌寒い。
キスをし、差し出された舌に応えながらも人肌が恋しいと思うぐらい。
だから空いている方の腕を奴の背中に回してみれば、奴も同じ事を思っていたのか、それとも俺の考えを読み取ったのか、俺を自分のもたれていた木に押さえ付けた。
結局両腕とも捕らえられて顔の横で縫われ、そのまま露になっている首元に跡を付ける。

「μφΡ?」

何かを聞かれたようなのにその何かが理解できなかった。
困ったような表情を向ければ気にするなとでも言いたいのか、いつもとは違う優しい笑顔を向けてくる。
それに安堵し、奴と同じように黒くなった自分の瞳を閉じて、与えられる全てのものを受け入れる姿勢を取った。








===‥



「…ッ!ぁ、あ!」

彼自身を取り出し舌で扱えば闇夜に響く彼の声。
言葉が通じなくても嬌声ぐらいは俺でも理解できる。
もっともっと声が聞きたくて、外気にさらされ既にかなり大きくなっている黒鋼自身を丹念に愛撫していった。

「ん…ぁ、*○※」

何かを呟いて俺の髪に指を絡ましてくる黒鋼。
先端を舌先で強く押せばそれだけで辛そうに足を痙攣させている。
先走りを舐め取り、扱いたり引っ掻いたりを繰り返しながら空いている手で早速秘部を解しにかかれば、慣れているはずなのに大袈裟に反応する君がとても可愛かった。
外だから恥ずかしいのもあるんだろうか、誘ってきたのはそっちのくせに。
口に出した処で通じるわけがないのだから何も言わないけど。
お互いの言っている事が理解できないなんてほんと不便。
渾名でからかう事も、言葉で攻める事も。
愛を囁く事も、そして名前を呼ぶ事すらできないのだから。

「も、入れるよ」

それでも話し掛けるのはやめない。
やめたくなかった。
黒鋼からだと俺の国の言葉がどんな風に聞こえているのかわからなかったけど、聞いていてほしかったから。
これが俺の、本当の音なんだよって。

「――ッ!」

「辛くない?大丈夫?」

片足を持ち上げて挿入するときつそうに顔をしかめるから尋ねてみる。
堅く閉ざしていた瞳が開いて俺を見、なんとなく予想がついたのかわかるように縦に振ってくれた。
そして力一杯首に抱きつくだけでなく両足も腰に絡め、欲しそうに唇を舐めてくるものだから理性が切れそうになってしまう。
彼らしくないその行動、この媚態。
数え切れるほどだけど、時折俺だけに見せてくれるから愛してくれてるんだと実感出来る。

「ん!!ん、ぁ…アッ!!」

彼を木に押しつけたままナカを攻めていく。
俺の服を破きそうなほど強く握っているけど、決して爪を立てようとしないのは怪我をさせたくないからだろうか。
そんな優しい君が本当に好きだよ、黒鋼。
肩口に顔を埋めてしまったから最中の可愛らしい表情は見えないけれど。



「黒鋼」







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