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□姫初め
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「嫌だ」

「お願い黒様」

「嫌だ」

「一生の頼みだから」

「嫌だ」

「何でもするからこの通り!」

「いーやーだっ」

手を合わせて必死に頼み込むファイだが黒鋼は断固として受け付けない。
ファイに背を向け、賑やかで鮮やかな外の景色をを宿屋の一室から見下ろしているばかり。
新しい年を迎えたこの世界には初詣というものがあるらしく、それに向かうべくたくさんの人の列がそこに出来ていた。
同じ方向に向かい、その中の何人かの女性は華やかな着物姿で。
実はファイのこのお願いにはそれが関係していたりする。
おかげで黒鋼は新年早々かなりの不機嫌モードだ。

「別にいいじゃない一回ぐらい着てくれてもー!小狼君達も出かけて今がチャンスなんだからさー!」

「半分放り出したくせによくもぬけぬけと…。俺はぜってえんなもん着ねぇからな」

どこに隠し持っていたのか、ファイが泣きながらバーンッと取り出したのは赤を基調とした綺麗な模様の着物。
もちろん女性用である。
一体何処から調達してきたのか疑問だが、大体の見当が付いている黒鋼は更に青筋を浮かばせてギロリと涙を流し続ける男を睨み付けた。
そしてまた窓の外に目を移す冷たい恋人に、ファイは情けなく鼻を鳴らしながらも引き下がろうとしない。

「どうしても着てくれないの?」

「ああ」

「こんなに頼んでるのに?」

「くどいぞ」

「………わかったよ」

はあ〜と深く溜息をついたのが聞こえ、やっと諦めたのかと肩の力を抜いたのだが。





「じゃあ最中の時に撮った黒たんのあられもない写真ばらまいてあることないこと言い触らしてまわってもいいんだ〜(黒笑」



「狽ネっ!!?ιι」





その矢先、ファイの爆弾発言+「アンタ誰?」的な変貌に黒鋼は酷く焦りの色を見せる。
本当に彼の手中に自分のとんでもない姿が写っている物を目にした瞬間、衝撃という名の電撃が背筋を一気に走り抜けた。
羞恥で赤くなる前に血の気が引いていく。

「俺は別にいいよ〜?その代わり洗いざらい黒んたの恥ずかしいコト、口外させてもらうから〜」

「てめ、それ脅迫…!」

「俺に着物姿見られて気持ち良くヤるか、それとも写真ばらまかれて死ぬほど恥ずかしい思いするか」

結局するのかよと内心突っ込みながらも、無害そうな輝く笑顔を向けられ選択を迫られれば結局前者を選ぶしか道はない黒鋼だった。
柄にもなく泣きたくなったとか。






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