いろいろ

□霙様
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これは四天宝寺中学校3年2組の日常である。


「白石、名前、おはようさん」

「おはよう、謙也」

「おはようさん」

「名前さん、おはようございます」

「おはよう、光」


3-2の日常。

それはおかしなことに3年の教室に2年財前光がいるところから始まる。

財前は3-2に毎朝訪れる。

いつも同じ時間に登校してくる謙也と共に、自分の教室にいかずにこの教室へやってくる。

そして話しかけてくる謙也を軽くあしらいながら、白石と共に登校してくる名前を待つのだ。

最近ではもう慣れてしまったのか、クラスメートも毎朝この教室に入ってくる財前と普通に挨拶を交わしている。


「せや、名前さん」

「ん?」

「今日部活休みやないですか。放課後何か予定とかありますか?」

「今日はなかったはずだけど…。蔵、今日って何かあったっけ?」

「いや、特にはないと思うで」

「そっか。ありがとう」

「それなら放課後、一緒に買い物行きませんか?」


部長の誕生日も近いですし、とこっそりと耳打ちする。

非常に不服ながら白石の誕生日プレゼントを買いに行こうと言えば断らないことは分かっていた。

それを分かっていて計画的に使うあたりやはり天才だ、と思う謙也であった。

そしてそう思っている謙也を見てこの人ほんまにアホや、と思う財前であった。


「そうだね。一緒に行こうか」

「はい。それじゃ、また昼休みに」

「うん、またね」





財前がクラスに帰ってから間もなくHRが開始された。

その後もなんの問題もなく進み、現在3限目。

今日の3限目は日本史だった。

窓側の1番後ろに座っていると日の光が差し込みとても温かく眠くなってくる。

前は謙也、横は蔵、斜め前は鈴木君、と自分よりも身長の高い3人に囲まれているため寝ていてもバレはしないだろう。

それに日本史は得意でこの辺ならば授業を聞いていなくても大体は分かる。

もう寝てしまおうかと思っていると自分の携帯がメールを受信しているのに気が付いた。

バレないようにそっと携帯を開きメールを確認する。


新着メール1件
    ―財前 光―


授業中のはずの財前からメールがくるのはこれが初めてではない。

でも決まってメールをしてくるのは財前のクラスが英語の授業で、このクラスが日本史の授業のときだけ。

お互いの得意な教科のときだけたまにメールがくる。

今日の内容は放課後のことだった。


{「今日どこ行きます?」}


タイトルはなく簡潔なメール。

後数時間で顔を合わせるというのに今メールをしてきたということはきっと財前も授業がつまらなかったか眠かったのだろう。


{「光さえよければ、新しくできたショッピングモールにでも行かない?」}


つい最近近くに出来たショッピングモールには行ったことがなかったためとても興味があった。

本やCDの品揃えも良いと友達に聞いていた。

メールを送ってすぐに返信がきた。

相変わらず返信が速い。


{「ええですよ。そこにしましょうか。」}


返信をしようとメールを打っていると隣の蔵から声をかけられた。


「名前…」

「ん?」

「そろそろ当たるで」

「うわ、本当だ…。ありがとう」

「おん」


小声で周りには聞えないように教えてくれる蔵は本当に優しいやつだと思う。

蔵に声をかけられてからすぐに当てられたが難なく答えることができた。


「ありがとね」

「おん。メールの相手、財前か?」

「うん。光のクラス英語だからね」

「財前は英語得意やからな…」

「本当、羨ましい」


クスクスと2人で小さく笑っていると前の謙也からノートの切れ端らしき紙が回ってきた。


{「2人だけで何や仲良くしとると俺寂しいんやけど!」}


その紙を見てクスっと笑っていると隣から手が伸ばされたのでその手の上に紙をそっと乗せる。

そして蔵が紙を見てクスっと笑いながら何かを書き込んでいるのを横目に財前へメール送り返す。


{「今当てられちゃったよー」}


メールを送り返すとそれを見て蔵がさっきの紙を渡してきた。

謙也に渡せということだろう。

何を書いたのかと気になってチラっと見てみる。


{「仕方ないやろ。俺ら幼馴染なんやし。」}


それに2人やないで、と書いてあった。

2人じゃないってことはきっと光が入ってるんだろうな、と思い軽く2つ折りにして謙也の背中をつつく。

先生が黒板の方を向いた瞬間に後ろに差し出した謙也の手に紙を乗せる。

紙が乗ったことを確認するとすぐに手を引っ込めて紙を開く。

その間にメールを確認すると財前からメールがきていた。


{「大丈夫でしたか?」}



大丈夫だったよ、と返信をして謙也から紙を受け取る。

中身を見てみる。


{「なんや、名前!また財前とメールしとんのか!」}


やっぱりバレたか、と思いながら、羨ましいでしょ?、と書いて謙也に渡す。

謙也が紙を開いて何か書き込んでいると丁度授業が終わった。

先生が教室から出ていくのを確認してから携帯を取り出す。


{「それならよかったっすわ。それじゃ、また昼に。」}


後1時間でお昼休みか。

次の授業は現国か。

などとくだらないことを考えていると謙也が後ろを振り向いて唇を尖らせていた。

その顔を見て隣でこちらを向いていた蔵と同時に声をあげて笑ってしまった。


「何や、その不細工な顔っ!」

「謙也っ、あー、お腹痛いっ!」


ハハハッと笑っていると謙也も笑い出し3人して声を出して笑っていた。

一通り笑い4限目の準備に取り掛かった。



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