UnificationGame

□03.
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「こっち。真っ暗だけど壁づたいに歩いて。途中で火をつけるから。」


貂の言うとおり真っ暗な道を壁づたいに歩く。

途中何度か信が頭をぶつけていた。

夜目が利く僕はあまり苦労しないものの、やはり抜け道は真っ暗で歩くにくい。

早く火をつけろと催促する信は何とも馬鹿っぽいというか何というか…。

愚者という言葉ではなく、馬鹿という言葉が本当にぴったり合うような気がした。

何度か頭をぶつけているうちに少しは頭がよくならないものかとも思うが、変に頭がよくなられて何か事を起こされても困るので、今はまだいいかと思い直す。

口に出さず信を罵っていると、貂が火をつけ始める。

一気に明るくなり、少し目を細める。


「!おい、お前ケガしてんのか?」

「俺のじゃない。上の血だ。」

「えっ?」


天井の隙間からは真っ赤な血が滴り落ちている。

政だけでなく、僕にもその血はついてしまっている。


「おいガキ、お前家族とかいいのか?上で殺されてるぞ。」

「そんなのいない。」

「「!………」」


貂はやはり一人でこの村にいたようだ。

だから、と妙に納得してしまう。


「オレは秦人じゃない。はるか西の山民族だ。なぜか知らないけど一族が山を追放になって黒卑村に流れ着いたらしい…。もうみんな死んじまったけどね。」


そう言われて格好の不思議さにも少し納得してしまった。

信と貂が小競り合いを始めると貂が持っていた火を政が奪う。


「遊んでないで急ぐぞ。」


流石に大王に火を持たせるわけにもいかない。


「政、僕が持、…ひっ!」


火を政の手から受け取ろうとすると壁に足がたくさん生えた虫がカサカサと動いていた。

気持ち悪い…。


「どうした?」

「な、なんでもない!持つから貸して。」

「あぁ。…フッ、なんだ虫か。」

「なんだじゃないって…。超気持ち悪い。こんなの見るくらいなら火つけなきゃよかった…。」


今まで壁づたいにと言われていたものの見えていたから壁に手をつかなかったことがこんなにも救われようとは…。

いつ触るかわからないし、本当に見えていてよかった。

火を政の手から受け取り横を歩く。

後ろから息を切らした貂と信がついてくる。

信は頭をかかえ何か思っているようだが、大方俺は何をやってるんだとか思ってるんだろう。

随分と精神的にキてるみたいだな。

石に足を引っかけた信が貂に倒れかかり、貂が大声をあげる。

細い道に入り、火を持った僕が政の前を歩く。


「あれ?ところで何で王様こんな所で兵に追われてんの?」

「弟が反乱おこしたのさ!醜い兄弟だぜ。」

「いや、でも変じゃね?」

「何がだよ。」

「だってさ反乱あるの知ってたから替え玉用意して黒卑村に隠れてたんだろ。でもさ、知ってたんなら未然につぶしゃいーでしょ。」


確かに貂の言う通りかもしれない。

しかし、そう上手く事は運ばないんだよ…。


「なんでそんなに逃げ腰なのさ、あんた!王様のくせに!!」


今まで歩くことをやめなかった僕と政がピタと足を止める。

それぞれ後ろを振り返ると、後ろの2人の動きもぎこちなく止まる。


「貂。」

「な、何スか?」

「どっちだ?」


決して怒ったとかそういうことで足を止めたのではなく、目の前に分かれ道が現れたために止まったのを、どうやら勘違いしたらしい。

まぁ、このタイミングで止まったら誰だってそう思うだろうな…。


「え?あ、左ス左。」


前を向き再び歩き出す。

左の道に進み、僕にだけ聞こえるくらい小さく息を吐いた。


「反乱を未然に防げなかったのは、俺にただ力がなかった、それだけのことだ。」


後ろでは顔を見合わせている。

政、話すんだ…。

政は自分が十三という若さで王位についたと話すと、信と貂は驚いた顔をした。

その他にも朝廷のことを話す。

僕はただ黙って聞いているだけ。

ここを抜けた後どうすべきかを考える。

信と貂はもう信用してもいいのだろうか。

じィのことも気にかかる。

朝廷内のことも気にかかる。

どこから手をつけるべきか。

やはり一度政と別れて行動しようか。

信と貂。

この2人ならば大丈夫だとどこか確信めいたものが生まれているのも確かだ。

だが側近として政を頼まれたからには離れるわけにも…。


「蒼…?」

「…ぁ、何?」

「…大丈夫か?」

「うん。ちょっと考え事してただけ。」


話しながらもこちらのことを見ていたらしい政に心配されてしまった。

見抜かれちゃったかな…。


「ここを抜けたら…、」

「え?」

「ここを抜けたら少し朝廷の様子を見てきてくれないか?お前の足ならばいけるだろう?」

「いけることにはいけるけど…。」

「俺のことは心配いらん。大丈夫だ。」

「…うん。」


追ってから逃げている今、距離的にもそれなりにあるため普通の人間ならば不可能。

それでも僕ならできる。

僕も人間だけどね。

ちょっと人より足が速いから。

政に言われてしまった以上、ここを抜けたら離れなければ…。

信と貂に託さなきゃ。

心を落ち着けるために一度息を大きく吸う。

また質問をされ話しを再開させた政の顔を盗み見る。

疲れている。

精神的にも、肉体的にも。

きっとじィにどやさせるなぁ。

それでも行かなきゃ。

朝廷に、…いや、殿のところに。

殿なら何か知っていることを話してくれるはず。



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