UnificationGame
□02.
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視界を赤が覆い尽くした。
大量の血を吹きだして朱凶は倒れた。
それでもまだ息はある。
最後の命乞いをしているようだが、口角が上がっているのがバレバレだ。
『孤児』という言葉に信は反応してとどめをさすのを躊躇った。
やはり自分や漂のこともある。
反応してしまうのも致し方ない。
しかし、
「お前の罪とお前の子は関係ない。」
その通りである。
信がささなかったとどめの一撃を大王である政自らさした。
「次はどうする。俺を殺すか?」
「!」
「もしそうなら俺もだまってやられるわけにはいかない。俺を守るために死んでいった人間が少なからずいるからな」
「大王を殺す気なら私も黙ってはいられない。そして今の君よりは強い自信がある。それに…。」
「漂もそのうちの一人だ。」
「………」
…地面が揺れている。
遠くの方でザッザッと地面を蹴る足音が微かに聞こえる。
「大王…。」
「ああ、まずいな。」
だんだんと音が近付いてくる。
遠くの方から叫び声が聞こえてくる。
それもどんどん近付いてくる。
「なっ何だ!?何が起こってる!?」
「軍だ。かなり多いぞ。」
「軍!?」
璽も無しに兵が動くとは軍系統は全て成蟜側に染まったか。
それに、
「大王、囲まれてます。」
「げえっ、いつの間にっ。」
さぁて、どう切り抜けようか…。
どこか抜け道があればいいけど、ここに来てから大王の傍を離れるわけにもいかなくて、全然見て回れてないしな…。
完全に詰まされたな。
相手は軍といっても別段強そうにも見えないし、いけるか…?
どこか1つ崩せば一応この場は切り抜けられるか。
よし…。
「くそっ!!それじゃ、もう一暴れするか!!」
「!?お前…、軍と戦う気か?」
「当たり前だ!!こんな所で死ねるか!!斜面をかけ上がる力は残ってねェから川沿いを斬り抜ける。しっかりついてこいよ!!」
「バカな、軍の包囲を突破できるわけが…、!ついて来い?」
「お前を殺すかどうかはこの包囲を突破してからゆっくり決めてやる。だから俺からはぐれるんじゃねェぞ!」
「政、僕もいるんだし大丈夫だよ。」
「!?お前もいくつもりか?」
「もちろん。こんなところでお前の首をとられるわけにはいかないからね。」
「仕方ない付き合うか。」
「っし行くぞ!!」
「ん?」
何か上から気配が…。
殺気はない。
敵じゃないみたいだけど…。
え、ちょっと、真上に…、
「政!!」
「うおおおおお」
ドン!!
「おわあっ」
目の前に現れた何だかよくわからないものを纏った小さな塊に盛大に驚く信。
すぐ近くで断末魔が響き渡る。
軍が迫ってきている証拠だ。
「!?…………何だこれは」
「あっ!お前はっ」
信は何か知っているようだけど…。
「抜け道を知っている。ついて来い。」
クイクイと指で合図をする謎の塊。
でも何か可愛い…。
「抜け道だと?この包囲を脱する抜け道があるのか?」
「当然だ。ここはお尋ね者たちの村だぞ。地の下は抜け道だらけで迷子になるほどだ。」
「だろうね。僕ももう少し見て回れたらよかったんだけど、助かるよ。」
「待て!こいつは信用できない!こいつのせいで俺は村の連中に囲まれたっ。まずはこいつからたたっ斬ってやるっ。」
「ひっ。」
「まぁまぁ、待てって。」
今にも斬りかかりそうな信を止める。
政も信の肩を掴みながら訪ねる。
「なぜ俺達を助ける?」
「あんたらの話をこっそり聞いてた。王様なんだろ、あんた。ってことは金持ちだ。」
「金目当てか。」
「悪いか?」
「悪くない。そっちの方が安心できる。」
「オイオイオイ。こんな顔も名も分かんねェ得体の知れない奴のどこが信用できるんだよ!」
ガサと音がしたと思えば目の前の塊が顔の部分を上にあげ、顔を見せた。
「河了貂」
「ガキ…んちょ」
河了貂と名乗ったのはまだ小さな子供だった。
これで顔も名も明かしたことになる。
「どうする?もう時間がないぞ。」
軍もだいぶ迫ってきている。
早くしなければ完全に詰まされてしまう。
「よし河了、案内しろ。」
「貂でいい。」
「おっ、おいっ!!」
「信も落ち着けって。万が一、貂が裏切るようなことがあったら真っ先に僕が斬るし。な?」
「お、おう…。」
前で案内している貂の肩がビクりと震えているのが見えた。
地下の抜け道に入ると上では松明を持ったたくさんの兵たちが村人を斬っていた。
岩の間からは上で斬られた人々の血が垂れてきている。
すぐ上に敵がいるために明かりを灯すこともできず、狭く暗い道をただ息を殺して歩いていった。
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